インターンシップ制度導入時の保険と給与

最近では本格的な就職活動の前段階として、「インターンシップ」を経験する学生が増加してきました。もともと教育や医療などの特定職種において実習という形でインターンシップが実施されていました。1990年代後半からは一般企業でもインターンシップ制度の導入が進み、徐々に参加する学生も増えてきているようです。

参考:「インターンシップの基本的な考え方と政策等の変遷について」(日本学生支援機構)

今回は、インターンシップ制度の導入に際し、インターンシップ生に対する保険加入や給与の考え方について説明していきます。

インターンシップ制度とは

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インターンシップ制度とは、学生が就職前に「就業体験」を行う制度です。社会人になる前に企業や団体で実際の業務内容を体験することで、「働くこと」がどういうことなのか、知見を深めることができます。

実際に体験することでより深く企業や業界について知ることができ、学生が自身の適性を理解することにもつながるため、就職活動におけるミスマッチが起こるリスクも少なくなるといわれています。

リクルートキャリアがまとめた「就職白書2018-インターンシップ編-」によれば、新卒採用実施企業のうち2017年度のインターンシップ導入企業(予定も含む)は68.1%。2018年度実施予定の企業は73.7%と、増加傾向にあるのが現状です。

参考:就職白書2018-インターンシップ編-(株式会社リクルートキャリア)

企業から見たインターンシップ制度導入のメリット

企業にとってさまざまなメリットがあることから、インターンシップ制度を導入する企業が増えているようです。たとえば、本格的な就職活動がはじまる前に、学生や学校の企業への認知度アップが期待できます。また、企業の社風や業務内容とマッチした学生を採用するには、早い段階から窓口となる学校側とのつながりを深めるのも重要です。

インターンシップでは、既存の従業員が指導に当たることが多く、従業員のモチベーションアップや成長にも有効といえます。インターンシップ参加者が社内に加わることで社内に新しい風が吹き、仕事の見直しや職場全体の活性化にもつながるでしょう。

近年では採用へのルートのひとつとして、インターンシップを活用する場合もあります。しかし、あくまでも「就業体験」の位置づけで、インターンシップ参加者に応募を強制することはせず、企業の認知度を高める一貫として導入するといいでしょう。

学生がインターンシップに参加する時期

「2016年度日経就職ナビ就職活動モニター特別調査レポート」内でのアンケート結果によれば、学生がインターンシップに参加する時期の上位は、大学3年の8月が25.6%、2月が20.2%、9月が16.7%でした。

参考:2016年度日経就職ナビ就職活動モニター特別調査レポート(株式会社ディスコ キャリアリサーチ )

おおむね、学校の長期休みを利用してインターンに参加する傾向が高いといえるでしょう。ただし、採用活動時期の繰り下げによって2月のインターン参加者割合が前年度よりも高くなっているのに注目です。

採用活動時期については、2021年春入社の学生から就活ルールが廃止されることが、経団連より発表されました。インターンシップの参加時期についても大きく変わる可能性があります。現在は大学3年時の参加が多いですが、これからは大学1年、2年時からのインターンの受け入れ企業や参加者が増えるかもしれません。

参考:新卒一括採用、転機に 経団連が就活ルール廃止発表(日本経済新聞、2018年10月9日)

インターンシップの種類

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インターンシップにはいくつかの種類があります。大きくは「期間が短期か長期か」「給与があるか無いか」の2つです。

短期か長期か

1から2日、長くても2週間程度などは、短期インターンとして区別されます。チームワークやコミュニケーション能力などを育成する観点からグループで業務を行うパターンが多いようです。また、人事担当者や各部署の従業員からの講義やレクチャー、交流会、職場内見学など、さまざまなアクティビティが含まれることもあります。

数ヵ月から半年程度と、長期間に渡ってインターンシップを受け入れる企業もあります。長期の場合、チームの一人として実務に携わることが多く、企業側のサポートが必要なものの、学生が実務に参加することで、職場の活性化にもつながるでしょう。

無給か有給か

インターシップに対する法規制がないこともあって、「無給」と「有給」のインターンシップが混在しているのが現状です。

従業員と同等の実務をこなし、労働契約であるとみなされた場合、「労働基準法」の適用を受けることになり、「有給」とする必要があります。

インターンシップが労働とみなされるかどうかに関しては、厚生労働省から下記のような通達が出ています。

一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる(旧労働省平成9年9月18日基発第636号)

一方、職場見学やレクチャーなどがメインで、あくまでも「見学や体験的なもの」とみなされる場合には、「無給」のことが多いようです。無給でも、交通費などの実費を支給している企業もあります。

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インターンシップ制度の特徴と注意すべきポイント

インターンシップに参加した学生を対象とした調査をみると、インターンシップに参加してよかったこととして「企業研究ができた」「業界研究ができた」「他の学生と交流できた」と答えている学生が半数を超えています。

就職活動を始める前に、企業や業界への理解を深める「体験・見学」の場として捉えている学生が多いことが推測されます。一方で、従業員と同等の実務があり、インターンシップの認識が企業と学生側で異なった場合には注意が必要です。

参考:キャリタス就活 2020 学生モニター調査結果(2018 年 10 月発行)(株式会社ディスコ キャリタスリサーチ )

たとえば、見学や体験などの範囲を超えて業務に関する実務を行うなどし、企業が利益を得ていた場合、労働者とみなされ、適切な報酬を支給する必要があります。「無給」としてしまうと、学生から「タダ働きさせられた」というイメージが企業に定着してしまい、企業の魅力や良さは学生に伝わらないでしょう。

インターンシップにまつわるトラブルを防ぐには、企業がインターンシップの目的をはっきりと明確化させておくことです。「無給」で「実習」としてインターンシップを行うのであれば、業務ではない実習や体験内容を準備しておきましょう。

導入前に知っておきたい保険について

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インターンシップ制度の導入にはさまざまメリットがあるものの、労働者性について考えるにあたり保険の加入と給与についてあらかじめ確認しておく必要があります。導入してから思わぬトラブルが発生する可能性もありますので、事前にしっかり確認しておきましょう。

保険に加入する必要性

実務をこなし、企業が利益を得ている場合には労働者とみなされ、アルバイトスタッフと同等に労災保険が適用されます。

参考:正社員、契約社員、パートタイム、アルバイト。雇用形態の違いと共通点まとめ

見学・体験の範囲内は労働者ではありませんが、就業体験中に機械の破損や、他人に対してケガを負わせるなどのトラブルが起きる可能性はあります。多くの大学や専門学校ではインターンシップに参加する学生に向けて、保険に加入することを勧めています。また、高価な機械を壊してしまったなど、学生では賠償しきれないインターンシップを受け入れる企業向けの保険もあるので、万一のトラブルに備えて加入を検討するといいでしょう。

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執筆は2018年10月30日時点の情報を参照しています。
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