自動で価格が決まる!?ダイナミックプライシングとは

中小企業の経営者の中には「ダイナミックプライシング」という価格戦略について聞いたことがある、すでに取り入れているという人もいるかもしれません。

今回は、ビッグデータや人工知能(AI)が活用される中で注目を集めているダイナミックプライシングについて、そのメリットとデメリット、ダイナミックプライシングを導入する際のポイントを説明します。

ダイナミックプライシングとは

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ダイナミックプライシングを日本語に訳すと、「ダイナミック」は「動的な」、「プライシング」は「価格をつけること」を意味します。ここからダイナミックプライシングとは、需要や供給にもとづいて商品やサービスの価格を調整する価格戦略を表します。

もっとも身近なダイナミックプライシングの例として、スーパーマーケットでの閉店間際のタイムセールがあります。賞味期限を過ぎて売れなくなってしまうくらいなら少し値下げしても収益につなげたいという供給側の思惑と、賞味期限が間近でもすぐに食べてしまえばよいし安いのであれば購入したいという消費者側の思惑が合致しています。

スーパーマーケットのダイナミックプライシングでは慣習や売り場の勘から、「半額」「3割引」などと価格がつけられることも少なくありませんが、最新のテクノロジーを利用して需要と供給を予測し、ダイナミックプライシングを行なっている分野もあります。特に単価が高い航空券やホテルといった旅行業では過去のデータから需給を予想し、それに基づく価格づけが行なわれてきました。ゴールデンウィークや夏休み、年末年始など旅行の需要が高まる時期に航空券や宿泊代の高さにびっくりしたことがある人も少なくないでしょう。たとえば、新幹線ではお得な切符や割引などはあるものの、これまで切符の価格はほぼ一定に固定されてきましたが、ダイナミックプライシングを検討する動きがあるようです。

参考:新幹線も料金変動? AIでホテルの需要予測が飛躍的に向上(2019年01月09日、日経クロストレンディ)

時期や天候によるダイナミックプライシングの他にも、より細かく値付けをするようなダイナミックプライシングも見られます。スポーツ試合ではこれまでシーズン中は同料金とされてきた座席でも、需要に合わせて価格を設定しようといった試みが出てきています。

参考:人気試合の価格は高く、チケット変動価格制「普及元年」(2018年9月11日、日経✕TECH)

ダイナミックプライシングが注目を集めている一因として、コンピューターが普及し始めて20年が経つ中で、商品やサービスの価格を決める根拠となるデータがデジタル化され、ビッグデータとして蓄積されてきていることが挙げられます。ビッグデータが手に入るようになり、コンピューターの処理能力が飛躍的に向上したこととも相まって、AIの研究や開発が加速し、より正確な需給予測や価格づけができるようになりました。

ダイナミックプライシングを行なうメリットとデメリット

ダイナミックプライシングの概要を把握したところで、次にダイナミックプライシングのメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット
経営者としては需要が低いときには売れ残りを避けて、需要が高まっているときには高値で商品やサービスを販売して収益を増やしたいところです。ダイナミックプライシングを採用することでこれが可能になります。お客様に対する真摯な姿勢やこれまでの商習慣から「価格は一定であるべき」と考えている経営者もいるかもしれませんが、今一度本当に価格は一定であるべきか検討してみる機会かもしれません。

デメリット
一方で、過度なダイナミックプライシングはお客様に不信感を抱かれる可能性もあります。一時的に安い価格がお客様の目を引いても、長期的にはお客様は誠意のある価格で購入できる店舗を利用するようになるでしょう。日経ビジネスが実施したアンケートでは、ダイナミックプライシングは「企業にとってお得なシステム」という印象を持っている消費者が7割を超えていました。

参考:価格変動で消費者より「企業が得しそう」が76.4%(2019年3月18日、日経ビジネス)

ダイナミックプライシングが注目を集めているとはいえ、商品やサービス、業種によって向き不向きがあること、過度な不公平感や価格差別について気をつけなければならないことはぜひ知っておきたいところです。

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ダイナミックプライシングを行う際のポイント

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商品やサービスの需要に合わせて価格付けするダイナミックプライシングのメリットは大きそうです。中小企業ではどのように取り入れていったらよいのでしょうか。

ビッグデータ、さらにはAIを活用したダイナミックプライシングをさまざまな場面で見かけるようになりましたが、このような先端技術を使ったダイナミックプライシングには大量のデータと技術力が必要です。

大量のデータがなく技術力が心もとないという場合でも、経験と勘に頼らないダイナミックプライシングを始めるための解決方法はあります。どんな事業でも日々事業を営む上で、販売データや顧客データといったデータが蓄積されています。すでにこのようなデータをある程度持っているという中小企業も少なくないでしょう。ダイナミックプライシングのはじめの一歩として、データを蓄積し、正確に事業の状況を把握することで、需給の波やお客様の傾向が見えてきます。たとえば、POSレジと連動し無料で使えるSquare データなど、これらを見える化する使いやすいツールも数多く提供されています。

商品やサービスに価格をつける際の経験と勘ももちろん大事ですが、データを加えて判断することで自信をもってダイナミックプライシングに取り組むことができます。また、適宜データを見て予測を検証していくことで、細かな改善にもつながり、より適切な価格をつけられるようになるでしょう。

また、ダイナミックプライシングを行なう上でお客様を混乱させ不安にさせないこと、不公平感をいだかれないように注意することが何より大事です。まずは事業や提供する商品、サービスがダイナミックプライシングと相性のよいものか慎重に検討しましょう。

ダイナミックプライシングと相性の悪い事業で無理に価格を変動させてしまうと、収益増加のための施策が一転、減収につながりかねません。検討の末、ダイナミックプライシングを取り入れることにした場合、お客様が納得できる価格を大きく上回らないよう配慮することを忘れないでください。いくら論理的に値段をつけたとしても、最後にお客様の心理をもとに妥当な価格かチェックしましょう。お客様がほしいという気持ちにつけこまれていると感じると、短期的に収益が増えたとしても、長期的にはお客様の信頼を失い、収益は減ってしまいます。さらに、どうして商品やサービスが提示する価格になるのか、理由を説明できるようにしておくとよいかもしれません。

事業との相性がよい場合、ダイナミックプライシングを取り入れるメリットは大きいですが、一方でお客様心理に注意を払う必要もあります。事業と相性がよさそうだと感じたら、ダイナミックプライシングを検討してみてはいかがでしょうか。

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執筆は2019年5月5日時点の情報を参照しています。
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