AIやIoTなどのテクノロジーの発達や、ソーシャルメディアの浸透などに伴い、2018年のマーケティング界では新たな手法や考え方がトレンドとして浮上しました。購買におけるパーソナライゼーションの深化とも相まって、マーケティングや販売の際のコミュニケーションの在り方も刻一刻と変化しています。
2018年を振り返り、ライブコマースやオムニチャネルのほか、2019年以降の経営戦略を考え実践する上で押さえておきたいマーケティングのトレンドを、注目すべきキーワードとともにおさらいします。
ソーシャルメディアの活用
インスタグラムやツイッターなど、写真やテキストを気軽に投稿できるソーシャルメディアのマーケティングにおける役割は、2018年も高い注目度を維持し、さらなる発展を遂げています。
インフルエンサー・マーケティング
インフルエンサーとは、「影響を与える人」を意味します。芸能人やスポーツ選手などの有名人だけでなく、説得力のある発言をする人、ニッチで面白い情報を発信する人、真似したくなるファッションの着こなしを紹介する人など、ソーシャルメディア上で数万人規模のフォロワーを獲得しているユーザーは、インフルエンサーとしてフォロワーの考え方やライフスタイルに影響を及ぼします。
インフルエンサー・マーケティングは、そうしたインフルエンサーに自社商品を使ってもらい、その人独自の感性や言葉を使ってソーシャルメディア上で商品を紹介してもらう手法です。最近ではマイクロ・インフルエンサーと呼ばれる、従来のインフルエンサーよりフォロワー数が少ないながら購買に結びつきやすいマーケティングが可能なユーザーの存在も明らかになっています。
参考:ソーシャルメディア・マーケティング戦略の鍵を握る存在?マイクロインフルエンサーとは
OOHメディア
家の外を意味するOOH(アウト・オブ・ホーム)。屋外の大型ビジョンやラッピングカー、交通広告、街頭イベントなど、広告の手法としてOOHそのものは従来から存在しています。しかし、ソーシャルメディアの普及とデジタル技術の進化により、その位置付けに変化が生じています。
たとえば、高度な技術によりデジタル広告では繊細なカラーや動きの表現が可能になり、広告として伝えられるものの幅が広がったことで、OOHは単なる広告からメディアとしての可能性を広げ、さらにはOOH自体が被写体としても注目されるようになりました。目を引く広告を思わずスマートフォンのカメラで撮影し、ソーシャルメディアに投稿するという行動により、OOHはただ見る広告から拡散する広告へと変貌しつつあります。
マーケティングのコミュニケーション
時代の変化に伴い、マーケティングの発信側と受け手側をつなぐコミュニケーションにも新たな潮流が生まれています。
バーチャル・ユーチューバー
動画配信サイトで活躍する架空のキャラクター、バーチャル・ユーチューバー。Vチューバーとも呼ばれ、確実に活躍の場を広げています。アニメキャラクターのようなCGに人間の肉声を当てるため親しみも感じやすく、またオリジナルキャラクターによる自由度の高さも手伝って、日本のみならず世界中で人気を呼んでいます。
人気のバーチャル・ユーチューバーに商品の宣伝を依頼するマーケティング方法も少しずつ広まっているほか、自社独自のバーチャル・ユーチューバーを設定して決算報告などを行う大手企業も登場しています。
ライブコマース
新世代のEコマース(ネットショッピング)の方法として、ライブコマースが挙げられます。録画ではなく、ライブ配信で商品の特徴や使い方を説明するという販売方法で、ライブゆえに配信を見ている人とチャットなどを使ってリアルタイムのコミュニケ−ションが可能です。
ライブコマースの双方向型のコミュニケーションには、商品や販売者の信頼性アップやつながりの強化、ファンを生み出しやすく買い物の楽しみを広げるといったメリットがあります。オンラインなので、購入決定や決済もスマートにできるのが強みです。
チャットボット
自動会話プログラムによるユーザーとのコミュニケーションを可能にしたチャットボット。2010年代後半に入って普及し始めてから、その勢いは加速し続けているようです。ユーザーの問いかけに対し、自動で最適な答えを返せるチャットボットは、企業のコミュニケーションにおける省人化と顧客満足度の向上に役立つばかりか、ユーザーからよくされる質問やリクエストの内容をデータとして蓄積しやすくもするため、サービス品質の向上やパーソナライズにも寄与します。
最近では、一問一答式のシンプルなチャットボットだけでなく、AIを採用することで複雑なコミュニケーションが可能なチャットボットも登場しています。チャットボットの導入を希望する企業は増加中で、導入していない企業にとってはコミュニケーション方法で差別化を図るチャンスとなる可能性もあります。
テクノロジーの利用
AI(人工知能)やIoTといったデジタル技術の目覚しい発達は、金融と情報テクノロジーを結びつけたフィンテック(FinTech)のような新世代ビジネスを生み出しただけでなく、日常的な買い物の在り方や、既存のマーケティング方法の効率化にも影響を与えています。
無人店舗
会計スタッフがいない、いわゆる無人店舗と呼ばれるコンビニエンスストアなどの小売店も2018年に話題になりました。無人店舗ではAIや顔認証システムなどを使うことで、レジなしで自動精算ができるという顧客側の利便性、人件費の削減、顧客データの収集などを実現しています。
現在のところ、スタッフレスという形態の珍しさも手伝って耳目を集めていますが、対人での買い物に慣れ親しんだ世代に浸透するのかといった点で今後も要注目です。
フル・ファネル・マーケティング(FFM)
マーケティングにおけるAIの活用方法の一つとして、フル・ファネル・マーケティングまたはフル・ファネル・マネジメント(FFM)があります。テレビCMや新聞広告、オンライン広告、店舗などを通じて、商品やブランドに対して興味関心を持ち、購入を検討し、そして購入に至るまで、人は見込み客から顧客へとさまざまなステップを踏みます。
FFMは、サイズの違う漏斗(ファネル)によってふるい分けられるそれぞれのステップを別個に扱うのではなく、AIを活用して総合的に見込み客を見つけ、育て、評価するという、新しいオンラインマーケティングの手法です。ターゲットを絞ってマーケティングを行うため、効率性という面でも注目が高まっています。
マーケティングの考え方
デジタル技術の発展でオンライン・ショッピングはどんどん便利になっている一方、買い物という体験そのものの問い直しや、マーケティングの在り方の見直しも進んでいます。
オムニチャネル
実店舗は試着や試用の場となり、購入はオンラインで価格比較後に最安値で、というショッピングの傾向は今後も加速すると考えられます。そこで、実店舗とオンラインショップとの顧客情報の管理を一元化することで、顧客満足度をアップさせながら利益を生み出すオムニチャネル(Omni-Channel)という考え方が広がりつつあります。
複数の販売チャネル(店舗、オンラインショップ、カタログなど)を持つ小売店は、オムニチャネルの考え方に基づいて顧客を総合的にフォローし、「そのショップで買わない理由」を減らしていくことで、機会損失を最小限に抑えることが可能になると考えられています。
デザイン・シンキング
デザイン思考、デザイン経営とも呼ばれるデザイン・シンキング(Design Thinking)は、デザイナー特有の思考パターンを生かしたクリエイティブなビジネスの発想法です。作り手側が「作れば売れる」の時代から、誰でもさまざまな情報にアクセスできるようになり顧客側が「本当に欲しいものだけを買う」時代になった今、主役である顧客の立場で商品やサービスを生み出すことが求められています。
デザイナーはデザインを開始する前に、顧客が「何を表現したいか」「何に使いたいか」などについてコミュニケーションを重ね、その中から本当に作るべきものの姿を明確化していき、試作し、柔軟に改善していきます。そのデザイン・シンキングをビジネスに持ち込むことで、現代のニーズに応えることが可能になるのではと考えられます。
日本のみならず世界中でマーケティングのトレンドは常に変化し続けています。2018年のトレンドを踏まえ、2019年以降のマーケティングの手段や対顧客の考え方をアップデートしていきましょう。
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執筆は2018年12月4日時点の情報を参照しています。
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