開業資金に活用したい!スモールビジネスに人気の補助金と助成金を一挙ご紹介

開業に発生する費用とは?」では、近年500万円未満で店舗を開業する人が増えていることがわかりました。500万円以上1,000万円未満を開業に費やすのが一般的であったころに比べると、自分の店を持つことも少し手が届きやすくなったのではないでしょうか。それでも、金銭的負担はできる限り減らしたいところでしょう。そこで今回は返済義務が発生しない点を特徴とする補助金と助成金を紹介します。

補助金と助成金の違いとは

物件探しや名前、ロゴ、商品選び……店の構想を練るのは心が踊るものですが、開業費用の調達方法に目を向けた途端、頭を抱えてしまう人は少なくないのではないでしょうか。開業資金の足しにしようと、補助金や助成金の活用を検討するビジネスオーナーも少なくないでしょう。両者とも返済義務がないところを魅力としますが、補助金は助成金と異なり受給できないケースもあるなど、性質が異なるので、下記の表から特徴を確認しておきましょう。

  補助金 助成金
担当省庁 主に経済産業省、地方自治体 主に厚生労働省、地方自治体
交付条件 各補助金の要件を満たし、審査を通過すること 各助成金の要件を満たすこと
応募期間 ・国の予算によって内容が決まるため、年度ごとに異なる
・1カ月から3カ月ほどの短期間で締め切られるものが多い
締め切り時期は特定されていない。ただし予算がなくなり次第締め切られる
審査の流れ 書類審査に合わせて、面談を設けるものもある 原則、書類の不備や要件を満たしているかの確認のみ
交付時期 ・補助内容を満たしているかの審査に合格後
・最短で申請から2カ月から半年、一般的には1年半ほど
・要件を満たしているかの確認を終えたあと
・最短で申請から2カ月から半年、一般的には1年半ほど
支給額 補助金による 助成金による
その他注意点 補助金によっては交付後、5年程度は事業状況を報告する必要があるものも 助成金によっては交付後、5年程度は事業状況を報告する必要があるものも

申請から交付までの流れを押さえておこう

申請から交付までの期間は補助金や助成金によっても異なりますが、おおまかな流れは以下の通りです。

助成金の場合……
(1)支給要件に沿った実施計画を提出する
(2)交付が決定する
(3)計画を実施する
(4)中間・完了報告をする
(5)中間・完了検査を受ける
(6)助成金確定通知が送られる
(7)助成金の支給申請をする
(8)助成金が支給される

参考:平成28年度創業助成事業Q&A(東京都中小企業復興公社)

補助金の場合……
(1)申請書類を提出する
(2)審査・採択が行われる
(3)事業者が交付申請をする
(4)交付が決定する
(5)事業を実施する
(6)中間報告をし、中間検査を受ける
(7)実績報告を行う
(8)確定検査を受ける
(9)補助金額を請求する
(10)補助金が支給される

参考:補助金の流れ(ミラサポ)

覚えておきたいのは、表の「交付時期」にもある通り、開業する前に給付金を受け取ることはできないという点です。いずれも担当省庁に経費を報告し、その金額を基に支給されるので、給付までは多少の時間が空きます。

複数の補助金&助成金の受給は可能?

補助金や助成金は税金を財源としているため、複数の受給は原則認められないものが多いようです。たとえば対象となる経費が重複する場合などは難しいでしょう。とはいえ、補助金や助成金の事業内容によっては複数受給できるものもあるので、申請をする際は必ず担当省庁に確認をしましょう。

参考:各種補助金の重複支給の取り扱いについて(地域産業振興課)

スモールビジネスにも最適!補助金&助成金

今までの例では、下記のような補助金や助成金の募集がありました。

助成金の例

  創業助成事業(東京都) 商店街起業・承継支援事業(東京都)
対象者 都内で創業して5年未満、または都内で創業を予定しており、
要件を満たす人であれば申請可能
都内の商店街で①「開業」②「事業多角化」のために新たな店舗を開業、あるいは③「事業継承」をする場合、店舗改装費などを一部助成する事業
対象経費 従業員人件費、賃借料、専門家謝金、法人設立費
広告費、備品費
事業所整備費(①店舗の新装・改装に伴う費用②設備や備品の購入費用③宣伝・広告費)、実務研修の受講費用、店舗の賃借料
最大助成限度額 300万円 580万円
助成率 対象経費の3分の2 対象経費の3分の2
参考リンク 「創業助成事業」申請について 商店街起業・承継支援事業

補助金の例

  中小企業のホームページ作成費用補助金(東京都中央区) 海外ビジネス戦略推進事業の補助金
対象者 新たにビジネスのためにホームページを制作する、あるいはすでに開設しているホームページを変更する。中央区内で納税している中小企業の事業者、個人事業主に限る 海外販路開拓、または海外拠点の設立を目指しているビジネス
対象経費 ホームページの制作費用、または変更費用 打ち合わせなどにかかる旅費、市場調査にかかった費用、外国語ウェブサイト作成の外注費用、企業資料翻訳費、現地通訳費など(※コースにより異なる)
最大助成限度額 5万円 【輸出型】(1)販路調査コース…50万円 (2)WEB集中コース…100万円
【拠点設立型】(3)進出コース…140万円 (4)移転コース…140万円
補助率 対象経費の2分の1 対象経費の2分の1
参考リンク 中央区ホームページ 平成30年度海外ビジネス戦略推進支援事業

そのほかにも年度を通してたくさんの補助金・助成金の公募があります。補助金に関しては中小企業庁のホームページにて募集情報を公開しているようです。また、最新の募集情報は以下のようなサイトからも確認できるので、ぜひご覧になってみてください。

J-Net 21
施策マップ(ミラサポ)

創業助成事業の採択数は2016年に100件、2017年に115件、2018年には151件と年々増加傾向にあるものの、補助金・助成金の実際の利用率は低いのが現状です。中小企業庁の広報ニーズ調査報告書によれば、補助金や助成金の認知度は51.5%でありながら、利用率は6.0%でした。利用しなかった理由には「手続きが煩雑であったため(14.7%)」「相談先がわからなかった(10.8%)」などが挙げられています。

同調査によれば、弁護士、税理士、中小企業診断士などからアドバイスをもらうことで踏み切れた人が多いようです。このように一人で抱えてしまわず、専門家の意見を求めると実行への道のりも具現化されるかもしれません。

参考:
採択情報(TOKYO創業ステーション)
平成28年度中小企業者における中小企業施策の認知度及び利用度の向上に向けた課題と広報の在り方に関するニーズ調査報告書(経済産業省)

書類の作成は申請代行への依頼も可能

「店舗開業に必要な費用とは。節約方法も教えます」にもあった通り、物件取得費用は決して安いものではなく、飲食店舗などの場合は特に保証金が高くつくものです。このように費用がかさむ店舗の賃借料なども補助・助成してもらえる事業をタイミングよく見つけられればうれしいところですが、用意しなければいけない書類も多く、準備作業を大変に感じるビジネスオーナーもいるかもしれません。たとえば以下のような資料が必要となります。

提出しなければいけない書類は申請する補助金や助成金によって異なります。ただし書類の提出漏れがあると提出日に間に合わなくなってしまったり、最悪の場合、審査対象から外されてしまったりする可能性もあるので、提出する際は抜けがないかよく確認をしましょう。

「自ら書類を準備するのは漏れがありそうで不安」「そもそも書類を用意している時間がない……」という場合は、専門家への申請代行を視野に入れてみるといいでしょう。助成金は原則、社会保険労務士(社労士)に依頼する形になります。補助金の場合は、認定支援機関に認定されている商工会や商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、行政書士などを含む「専門家」に依頼をしましょう。代行費用は、2万円から10万円ほどが相場のようです。

補助金や助成金の計上方法

補助金や助成金から得た収入は、どのタイミングで、どのように計上するのでしょうか。

補助金や助成金は一般的に「雑収入」として仕訳をし、基本的には「支給決定通知書」が到着したタイミングで計上します。一方で、決算期内に入金されるのか、決算期をまたいでの入金になるのかによって計上方法が異なるので、下記の表を参考にしてみてください。

「支給決定通知書」を受け取り、決算期内に補助金・助成金が入金される場合は下記のように計上

借方 金額 貸方 金額
預金(普通・当座) 100万円 雑収入 100万円

「支給決定通知書」を受け取ったが、補助金・助成金の入金日が決算期を超えてしまう場合
(1)まずは未収入金として計上

借方 金額 貸方 金額
未収入金(補助金、あるいは助成金) 100万円 雑収入 100万円

(2)決算期後、受給時に下記のように計上

借方 金額 貸方 金額
預金(普通・当座) 100万円 未収入金(補助金、あるいは助成金) 100万円

また、補助金と助成金はいずれも法人税の課税対象となります。つまり補助金や助成金は「収益」として計算され、そこから「費用」を引いて出した「利益」が通常通り、課税対象とされます。一方で補助金と助成金は消費税の課税対象ではありません。

参考:消費税のしくみ(国税庁)

万が一補助金・助成金の申告が漏れてしまうと、加算税の一つである「過少申告加算税」が課され、逆に損失をもたらしてしまうので注意しましょう。加算税についてはこちらでも詳しく説明しています。

返済義務が発生しない点が特徴である補助金・助成金。ものによっては店舗の新装・改装費用や、広告費、人件費を補助・助成してくれる事業もあり、開業前に給付してもらうことはできないものの、後の資金繰りに生かすことができます。締め切りに間に合うことを確認したうえで、活用を検討してみてはいかがでしょうか。次は補助金や助成金と併用したい融資を紹介します。


続けて読もう!融資を活用しよう

(1) 開業に発生する費用とは
(2) 補助金・助成金を活用しよう
(3) 融資を活用しよう
(4) クラウドファンディング・ビジネスコンテストにチャレンジしてみよう

執筆は2019年11月26日時点の情報を参照しています。
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