【事例】「物流なんて分野、契約してくれないんじゃないかと思ってた」 ――ソクハイ×Squareはバイク便をこう変えた

東京都品川区に本社を置く「ソクハイ」の成長の鍵は、文字通りの“即配力”だ。どこよりも速く、お客さまの大切な荷物や情報を届けるというバイク便サービスを提供するソクハイは2015年10月、配送料の決済手段として、新たにSquare Reader(スクエア リーダー)を使ったクレジットカード決済を導入した。その理由は「シンプルさ」そして「使いやすさ」だ。ソクハイ 専務取締役 坪谷浩氏に、Squareの導入にいたるまでの懸念と、利用を開始してからの意外な反応などを聞いてみた。

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シンプルで使いやすい。懸念していたお客さまの反応も「非常に好評」

通常、「バイク便」を利用するお客さまが求めるものは「大事な情報を早く届けてもらう」ことだ。その際、決済の手間を取らせることはサービスの低下を意味する。

これまでソクハイでは決済手段として、現金、もしくは請求書を発行して後日入金していただくなどの方法を採っていた。しかしお客さまがバイク便を利用する理由は、ある荷物を急に相手に渡さなくてはならなくなったなどの急を要する場面だ。手元に現金の持ち合わせがない場合もあるだろう。ある程度遠方に荷物を届けなくてはならない場合、クレジットカード決済が可能になれば、お客様にとってもプラスになる。そこで、ソクハイも2014年7月にはクレジットカード決済を実現すべく、専用のハンディ端末による対応を始めた。

しかし、スペースの限られたバイク便において、専用端末の大きさはライダーにとっても負担になる。決済には携帯電話が必須で、その連携作業も手間取る。さらに、安全性の高いクレジットカードのICチップの読み取りに対応することが難しいことが分かり、早々に次の仕組みを探していたという。ソクハイは関連する金融機関に相談したところ、多くの企業から「そのニーズであればSquareがいいのでは」という回答が返ってきたという。

Squareの端末は専用のハンディ端末ではなく、既存の「スマートフォン」のヘッドフォンジャックに付ける、わずか数センチ四方のデバイスだ。既にドライバーに対しAndroid端末を連絡用に配布済みだったソクハイは、Squareの端末を導入する。その端末代は5,000円足らずで、初期投資のハードルはほとんど無かった。

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この小さな端末を、スマートフォンに挿すだけでクレジットカード決済ができる――配送員にとってこのコンパクトさはプラスだった。しかし、通常ならば小型プリンターで印字したレシートを渡すべきところを、電子のレシートのみで対応することに当初は懸念を感じていたという。そんなことを説明したら、お客さまからクレジットカード決済を断られるのではないだろうか――結論から言うと、その懸念は杞憂に終わった。

カード決済は導入後“6倍”に、Square決済の“リピーター”も続々と

「トラブルはいまのところ皆無で故障もない。“バイク便のお兄ちゃん”がカードを預かってピコピコなんておっかながるんじゃないかと思っていたが、そんなことはなかった」と坪谷氏は述べる。「ドライバーからは『ハンディ端末よりも簡単にスワイプできる』と評判でした。その上、こんな小さな端末でもICチップ搭載のクレジットカードを決済できるようになった」

これまではハンディ端末とスマートフォンをペアリング設定する必要があったが、Squareならばイヤホンジャックに「挿すだけ」。導入のハードルは、お客さまにもソクハイにとっても想像以上に低かったようだ。

紙の明細が出ないことも、ネガティブな反応はなかったようだ。「必要であればメールアドレスを入力することで、明細がデジタルで送信される。しかもこれは初回に登録してしまえば、2回目以降はSquareが“覚えていてくれる”ため、ひと言“前回と同じでいいですか?”と聞けばいいだけと分かった。リピーターになってくれるお客さまも増えた」

これにより、2014年7月に月20件程度だったクレジットカード決済は、2015年12月には約120件程度まで増えたという。「ソクハイのバイク便を利用する方には、カメラマンやクリエイターなど、制作物納品したいという個人事業主も多いので、スムーズにクレジットカードを使えるようになったことで、その方たちがリピーターになってくれている」

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クレジットカードのセキュリティもおまかせできる

それ以外にも、本来は他の配送業者に乗せる予定だった大量の荷物があふれてしまい、急きょバイク便で対応するというお客さまがおり、数十万を現金で用意できないことから、「クレジットカードで決済できるならお願いしたい」と言われる事例もあったという。この時、ソクハイはSquareから思いがけない連絡を受けたという。

「Squareからこの取引について、安全性の確認の連絡が来た。通常のバイク便では考えられない高額な決済だったからかもしれない。Squareが取引の安全性をちゃんと管理しているということが分かり、感心した記憶があります。クレジットカード情報もソクハイ内に保持しないため、セキュリティ面はSquareにおまかせできるところも安心できていい」

この他にも、ソクハイとしてSquareのメリットは多かったという。例えば手数料と入金タイミングだ。「現金化はだいぶ早くなった。これまでは入金が月末締め、翌月払いというようなものだったが、Squareの場合は週に1回入金が行われる。Squareの指定口座ならばもっと早いというが、週に1回でも十分早くなった」と述べる。

「物流」はカード事業者的には魅力的じゃない?――それでもSquareなら

手数料自体はこれまでハンディ端末で行っていた決済手段や他の業者と大きく変化はなかったが、「他の事業者は、業種業態、規模によって、交渉の結果『あなたのところの手数料はこれですよ』と言う額が出てくる。Squareの場合、交渉もなしにいきなりこれまでとほとんど変わらない額が出てきた。非常に分かりやすい体系」という。

そもそもクレジットカード会社から見ると、金額的にソクハイが行う物流は金額が小さく、坪谷氏は「多分魅力的なところと見られていないのでは」と考えていた。しかし「Squareは企業規模、業種を全く気にしない。どんな企業にもフラットに対応し、少額でも問題なくサービスを利用できる」と評価する。「導入の時も、Squareへの問い合わせのレスポンスは速かった。そのサポート力も良かった」と述べる。

さらに、経理面、管理面におけるレポートの存在も大きい。ソクハイのもとにはSquareから毎日、どれだけの利用額だったか、リピーターは何パーセントだったかといったレポートがメールで送られてくる。この数字を見ながら戦略を立てることも可能だという。

「むしろカード決済はSquareに一本化したいくらい」

ソクハイでは現在、約100台のSquare端末を持ったライダーが東京中を走り回っている。今後、大阪、名古屋地区にもSquareの展開を計画しているという。「バイク便でクレジットカード決済なんて、きっとクレジットカード会社が契約をしてくれないだろうし、ニーズもないと考えていた。でも今ではWebでのクレジットカード決済もSquareに全部おまかせしたいくらい」と坪谷氏は述べる。

Squareの小さなデバイスがソクハイに利便性とスピードを提供し、決済を通じて重要な情報の流通に役立ち始めている。

「こんなに簡単に使えることが分かれば、いろんなところがクレジットカード決済を使い始めるのではと思う。同業他社に聞かれたらウチは困るかもしれないね(笑)」