2020年7月のレジ袋有料化がきっかけで、エコバッグを利用するようになったり、ペットボ トル飲料の購入を控えるようになったり、プラスチック製品そのものの利用を見直した消費者は多いのではないでしょうか。事業者の中には、この機会にレジ袋以外のプラスチック削減や、流通工程がトレースできる商品の仕入れ、飲食店であれば食材を無駄なく使い切る方法など、プラスチック問題に限らずサステナビリティにつながる取り組みを検討した方もいるかもしれません。

軽くて丈夫なプラスチック素材は、日常のありとあらゆるものに使われているため、この素材に頼らず商売を営むためには、相当の覚悟が必要です。プラスチック削減も、サステナビリティも、背伸びをした取り組みをある日突然始めるより、まずは毎日の中でできることから始め、着実に取り組みを継続することが大切です。持続可能な環境、社会、経済を意識する事業者が毎日少しずつでも増えれば、地球は一歩ずつ昨日より良い場所になるに違いありません。

今日は、そんな「毎日の中でできる」ことをご紹介します。

無料で給水できるスポットを探せるmymizu

持続可能な社会を目指し、二人の若い社会起業家が2019年に始めた「mymizu(マイミズ)」というプラットフォームが広がっています。とある日本の美しいビーチが大量のゴミ、主にペットボトルで汚染されていたことに衝撃を受けた二人は、国内で一日に約6,900万本消費されるペットボトル削減に貢献できればと、世界20万ヵ所の無料で給水できるスポットを、外出先で手軽に確認できるmymizuアプリを開発しました。

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この給水スポット「mymizuスポット」は、マイボトルを持ち歩く人が飲み水を無料で給水できる場所です。現在、給水スポットには、カフェやレストラン、ホテル、公共施設などが登録され、IKEAなどの大型店舗からローカルの小規模店舗まで、さまざまな事業者がmymizuの活動に賛同し給水スポットとして、このプラットフォームに参加しています。

mymizuのウェブサイトによれば、安全な飲み水を無料で提供できれば、どんなお店や施設でも給水パートナーとして無料でmymizuに登録することができます。カフェ、飲食店、ホテル、 美容院、小売店、コワーキングスペース、フィットネスジム、公民館などの公共施設を含め、給水希望の方に無料で飲み水を提供することを条件に、施設の責任者が店舗名や所在地など簡単な情報を入力するだけでmymizuの給水パートナーの申請ができます。感染症対策は必須ですが、提供するお水は安全に飲めるのであれば水道水でも構いません。既に店内でお水をセルフサービスで提供している事業者にとっては、現在の業務オペレーションを大幅に変えることなく始めることができます。毎日の中でできるサステナブルな取り組みのひとつとして、ぜひ検討してはいかがでしょうか。

給水パートナーに登録したリビセンの話

Squareの加盟店でもあるReBuilding Center Japan(通称リビセン)は、昨年8月に「mymizuスポット」としてお店を登録しました。リビセンの1階にあるカフェには、シルバーのウォーターサーバーが置かれ、リビセンを訪れた誰もが自由に給水できるようになっています。そのリビセンでディレクターを務める白石達史さんに、mymizuの給水パートナー登録についてお話を伺いました。

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–ReBuilding Center Japanは、もともと「古材を活用する」ことを事業としているので mymizuとは「サステナブルな社会を目指す」という点で共通しています。mymizuの給水スポットとしての登録は自然な流れだったのでしょうか。

「mymizuについては、サステナブルな社会を目指して事業に取り組む複数の取引先から聞き、知りました。mymizuのミッションはリビセンの理念に通じるものがありますし、リビセンが運営するカフェでは、もともとお水をセルフサービスで提供していました。mymizuスポットへの登録がプラスチック削減に少しでもつながるならと、すぐに登録をしました。

給水ができる環境さえ整えてあれば良いので、カフェのオペレーションにも特別変更はありませんし、特別な準備も必要ありません。登録も簡単でした。もともとあったセルフサービスの給水を、『誰でもどうぞ』と対象を広げた感覚です」

–リビセンの給水スポットは、どのような方の利用が多いのですか。

「リビセンでは作家さんの企画展を開催することがあるのですが、企画展に訪れるような長時間滞在するお客さまが給水する姿を見かけるようになりました。あとは、リビセンで販売しているオリジナルボトルを購入された方が給水を利用することもあります。リビセンにいらっしゃる方は、サステナブルに関心のあるお客さまが多いので、マイボトルを既に持っている方も多いです。

諏訪という土地柄、給水のためだけにリビセンにいらっしゃるケースはほとんどありませんが、自由に給水できる雰囲気を作ることで、より利用が広がった印象があります」

–自由に給水できる雰囲気を作るとのことですが、リビセンを訪れる方にはどのように給水や mymizuについて案内しているのですか。

「8月にmymizuスポットに登録された時に、ウェブサイトとInstagramでお知らせをしました。一度お知らせをしただけですが、かなりの反応がありました。mymizuの理念に共感した方がたくさんいらっしゃったようで、皆さんに喜んでいただけたのは良かったです」

–サステナブルなビジネスに取り組む中で、日頃特に意識していることはありますか。

「リビセンでは、古材の再利用を通して循環する経済を作ることを目指しています。たとえば、新しい木材と古い木材を比べた時に、「古材だから価値が低い」という考え方を、僕たちはアップデートしたいと考えているんです。ものづくりの過程で出るB級品を、A級品を同じ価値で流通させていく方法には、さまざまあります。デザインで解決したり、マーケティングで解決したり。古材も板だけでは300円くらいの値段ですが、トリミングをして工夫をすることで1500円の価値を生み出すこともできます。社会を変えるには、ものの見方を変えるクリエイティブなアイデアが大切で、『どうしたら人々の生活に役立てるか』『必要と感じてもらえるか』『魅力を感じてもらえるか』を常日頃から考えています」

もともと古材の活用を通してサステナブルな社会を目指したビジネスを営むリビセンでは、 mymizuについては、これまでの業務オペレーションの延長線上で、無理なく参加しています。mymizuの給水パートナーの登録は、毎日の中でできることの一例です。日頃お水をお 客様に提供していないお店では、少し難しいかもしれませんが、あなたのお店に合った小さ な一歩を見つけることから始めてはいかがでしょうか。