正社員、契約社員、パートタイム、アルバイト。雇用形態の違いと共通点まとめ

事業が軌道に乗り、人手不足の解消や事業の拡大が視野に入るようになると、従業員を新しく雇い入れることを検討する必要が出てきます。従業員を募集するには、ハローワークを利用したり求人広告を出したりと様々な手段がありますが、いずれの場合も「どのような人材をどのような形態で雇用したいのか」を明確にしなければなりません。

従業員の雇い方について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

経営者が求める人材と従業員が希望する働き方が一致するように、まず経営者自身が雇用形態の違いを正確に把握しておく必要があります。

人材紹介サービスや求人誌などを見ると、正社員、契約社員、パートタイム、アルバイトといった雇用形態の分類がしばしば使われていますが、今回は、これらの違いや共通点を正しく理解するためのポイントをお伝えしたいと思います。

通常の労働者と短時間労働者

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実は、法律上では正社員という雇用形態の定義は明確にされていません。

一方、パートタイム労働者については、1993年に制定された短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称:パートタイム労働法)で、“一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう”と定義されています。

ここでいう通常の労働者とは、各事業で定められている所定労働時間をフルタイムで働く労働者を意味し、一般的には正社員や正職員を指します。

通常の労働者よりも働く時間が少ない場合は全て短時間労働者に該当することになるので、例えば、一日の所定労働時間が8時間と定められているところを一日5時間のみ働くパートタイム労働者は、短時間労働者に当てはまることになります。

他にも、アルバイト、嘱託社員、契約社員、臨時社員、準社員なども「通常の労働者の所定労働時間より短い時間を働く」場合は、全て短時間労働者として分類されます。したがって、呼称が違えども、雇用形態は労働時間を基準とした場合、法律上では同じ定義に区分されることになります。

仕事内容や責任の違い?

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各雇用形態における法律上の違いが労働時間のみであるということを理解したら、これから雇い入れる従業員にどのように働いてほしいかを、仕事内容や業務上の立場や責任という観点から考えてみましょう。

正社員

正社員とは、一般的に、労働契約の期間の定めがなく、長期雇用を前提として雇用される被雇用者を指します。

新卒や未経験の場合でも、将来的には会社の基盤となり事業の拡大・発展に貢献することが期待されているので、社内研修や扶養手当などの待遇があったり、被雇用者の働く環境や権利が会社によって守られていることが特徴です。

一方、事業の将来に関わるような責任ある業務を任されたり、転勤や異動など本人の意向にそわない業務命令に従わざるを得ない場合もあります。

会社側からすると雇用や育成にかけるコストが比較的大きいので、よほどのことがなければ解雇されることはありません。したがって、安定したキャリアアップやスキルアップを目指したい人にとっては向いている雇用形態といえるでしょう。

契約社員

契約社員とは、本来は優れた専門知識や高度な技術など高い専門性を重視して雇用される雇用形態です。そのため、契約条件によっては正社員よりも賃金が高いなど優遇される場合がありますが、昇進や昇給することは正社員に比べて稀で、雇用期間が定められているので、業務内容や評価によっては任期満了で解雇ということもあり得ます。

そのため、専門分野やスキルを活かせる仕事を期間を決めて働きたい人に適した雇用形態といえます。

パートタイムとアルバイト

よく並べて使われることの多いパートタイムとアルバイトですが、実はこの二つに決定的な区別はありません。

パートタイムもアルバイトも、働く時間や日時を好きに選べるという特徴があります。通常、単純作業など未経験でも働くことができる仕事が多いので、社内における昇進などはあまり期待できませんが、学業や子育てなどを理由に労働に当てる時間に制限がある人にとっては適した雇用形態といえます。

ところで、アルバイトという言葉は、労働や勤労を意味するドイツ語のarbeitに由来しています。家庭教師などの副業や、短期労働や臨時収入などを意味する隠語として、戦前の学生間で使われるようになり、今でもその意味合いを強く残して認識されている言葉です。

このため、パートタイムは主に主婦、アルバイトは主に学生、というように捉えられがちですが、実際にはその言葉を使う人や雇い入れる側の意識による区別に過ぎず、仕事内容や働き方には違いはありません。

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保険への加入

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一人でも労働者を雇う場合、会社(経営者)は社会保険と労働保険(雇用保険と労災保険の総称)に加入する義務がありますが、ここで注意したいことは、パートタイムやアルバイトなどの短期間労働者にも、一定の条件を満たしている場合に限り、保険加入の義務が発生するということです。

「パートタイムやアルバイトなどの非正規雇用社員には保険が適用されない」と間違って認識されることがよくありますが、条件をきちんと理解して該当する従業員は保険に加入させ、保険料を給与から天引する必要があります。

なお、労災保険は会社側が全て負担するので従業員から保険料を控除する必要はありません。

社会保険の加入条件

・勤務時間が正社員の四分の三以上の場合
・一ヶ月の勤務日数が正社員の四分の三以上の場合
・契約期間が二ヶ月以上の場合

また、2016年10月に短期間労働者への社会保険の適用が拡大され、上記の条件を満たしていない場合でも、以下の条件を満たしていれば社会保険の適用対象となりました。

・一週間の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金88,000円以上(年収106万円以上)
・勤務期間が一年以上見込まれる
・学生でない
・従業員501人以上の事業所に勤務している

雇用保険の加入条件

・勤務期間が31日以上見込まれる
・一週間の所定労働時間が20時間以上

経営者は、雇用保険の被保険者となった短期労働者に対して、事業所を管轄するハローワークに届出を提出する必要があります。

以上からも、社会保険や雇用保険の適用の有無は、雇用形態だけに基いて経営者が決めるものではなく、一定の条件を満たしていればいずれの従業員にも当てはまるということが分かると思います。

労働基準法は全労働者が対象!

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以前紹介した労働基準法、守れていますか?今すぐ確認したい6つのポイントでは、労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めた法律であり、雇用形態に関わらず全ての労働者に適用されるということをお伝えしました。

例えば、労働者の一日の労働時間が6時間を超える場合は、経営者は45分以上の休憩を与えることが義務付けられています。これは正社員やアルバイトなど全ての従業員に適用されるものです。

有給休暇については、短時間労働者の適用条件が定められているので、内容をよく理解しておきましょう。有給休暇について(東京労働局)

従業員を新しく雇い入れる時は、本人がどのように業務に関わっていきたいかを面接などでよく確認することが、雇用される従業員にとっても雇用主の経営者にとっても今後に関わる重要なことです。

執筆は2017年4月13日時点の情報を参照しています。
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