青色申告のすすめ。2020年分からはe-Tax申告をすると控除額が10万円アップ!?

確定申告の時期が近づくとよく目にする青色申告。帳簿の煩雑さから敬遠されがちですが、実は青色申告だけに認められる特例などがたくさんあり、確定申告時の所得額を減らすなどの節税効果が大きいので、スモールビジネスにこそおすすめの制度です。

今回は、青色申告の概要と導入のメリット、青色申告を始めるための手続き、青色申告を簡単にしてくれるツールなどを紹介します。

青色申告とは

日本では自分から所得と税額を申告して納税する「申告納税制度」を採用しています。そのため、個人事業主を含め多くの人が年に1度確定申告を行います。このときの所得を正しく計算するため、収入と経費を書類に残して管理する記帳を一定の水準で行い、正しい申告をした場合に有利となる制度が青色申告です。記帳が簡単な白色申告と比べ、青色申告は節税効果が高くなります。

青色申告の対象になる所得の種類は、不動産所得、事業所得、山林所得です。

青色申告にするメリットは

青色申告で有利なのは全体的に経費として認められる範囲が広がって合計所得額を下げ、税額を減らせるところです。一部資産の評価も有利になるものがあります。

たとえば、家事関連費などの家賃や光熱費なども事業に関係するものとして按分することで経費にのせることができる範囲が増えます。個人事業者には助かる節税ポイントです。

青色申告の特典と呼ばれる制度には、次のようなものがあります。

青色申告特別控除
原則として複式帳簿で記帳し、損益計算書・貸借対照表を作成して確定申告すると、最高で65万円まで所得控除ができます。適用されないと10万円までになります。白色申告の場合にはこの特別控除はありません。

なお、2020年分から一部見直しが入ります。電子帳簿保存にしてe-Tax(国税電子申告・納税システム)で申告しないと控除額55万円に下がってしまうので注意しましょう。

参考:令和2年分の所得税確定申告から青色申告特別控除額・基礎控除額が変わります!!(国税局)

青色申告専従者給与
事業主の家族や親族が事業を手伝っている場合の給料を経費にすることができます。生計を一にすること、15歳以上であること、その事業にもっぱら従事していることなどの条件があります。白色申告の場合の事業専従者控除は、配偶者が最高86万円、15歳以上の親族は最高50万円と上限があります。

貸倒引当金
売り上げや貸付のお金が回収できない場合に備え、年末の売掛金や貸付金の残高のうち、一般は5.5%、金融業は3.3%以下の金額を貸し倒れによる損失の見込額として経費に計上することができます。白色申告の場合は、会社再生や再生手続の申立など特定の場合に限定されます。

純損失の繰り越し・繰り戻し
所得が赤字になった場合、赤字を3年間繰り越すことができ、翌年以降の黒字の所得から控除することができます。逆に、黒字だった翌年赤字になったときに赤字を前年分に繰り戻せば、所得税額の還付を受け取ることもできます。白色申告の繰越控除は、変動所得や被災事業用資産の損失に限定されます。

少額減価償却資産の特例
2020年3月までの期間限定ですが、30万円までの減価償却資産の取得価格を一括で経費に計上できます。1年間の合計額は300万円まで適用できます。10万円を超える備品を耐用年数にあわせて毎年経費計上する煩わしさがありません。パソコンや機材などの有形だけでなく、ソフトウェアや特許権、商標権などの無形も対象で、中古でも適用されます。この特例は白色申告者には認められていません。

棚卸資産の評価方法(低価法の適用)
事前に税務署へ届け出をすれば棚卸資産に低価法を適用できます。低価法は12月末日の棚卸時の時価と取得したときの原価を比較して低い方を棚卸資産の金額にできる方法で、仕入れたときより在庫が値下がりしてしまった場合の損益を計上できます。白色申告には低価法の適用はありません。

青色申告のデメリット

一方で青色申告するデメリットについては、確定申告時の提出帳簿が正規の簿記の原則に沿っているものでなければならず、保存管理もしっかりしなければいけない点が挙げられます。

事前の承認申請が必要
青色申告しようと急に思い立ってもすぐに適用されるわけではありません。事前に承認申請を行い、手続きしておく必要があります。

帳簿が多く煩雑
原則として複式簿記にする必要があり、白色申告に比べると帳簿が複雑になります。また、損益計算書、貸借対照表、総勘定元帳、仕訳帳や、補助簿として現金出納帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、経費帳など、事業内容によってはいろいろと揃えていく必要もあります。取引が大きくなってくると、税理士に依頼するなどの手間やコストもかかってきます。

ただ、白色申告でも帳簿の提出は求められますし、最近の会計ソフトは簡単な入力でこうした帳簿を自動作成する機能も充実してきています。

長期保管が必要
帳簿類は原則7年間、請求書・見積書などは5年間の保管が必要です。

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青色申告を始めるには

青色申告を始めるためには、納税地の税務署に届け出を行う必要があります。

青色申告承認申請書の提出
白色申告から青色申告に変更する場合はその年の3月15日までが提出期限です。新規開業の場合は開業届と同時に提出するのがおすすめです。開業後単独で申請する場合は、事業開始の日から2カ月以内が期限(1月1日から1月15日までの場合は3月15日まで)が期限です。

青色申告で事業を行なっていた人から相続により事業を引き継いだ場合、相続の日の時期によって3段階の期限があります。8月末日までの場合は4カ月以内、10月末日までの場合は12月末日まで、12月末日までの場合は2月15日までが提出期限です。

記帳
複式簿記で毎日の取引を正確に記帳します。記帳のポイントは、事業の会計と家庭の会計をきちんと区別しておくことで、それぞれのお金の流れを分けて記帳し、証拠となる領収書や請求書などを保管します。

所得税青色申告決算書、確定申告書Bの作成
年が明けたら収入と経費をとりまとめ、所得税青色申告決算書を作ります。確定した税額をもとに確定申告書Bを作成し、決算書を添付して提出します。

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青色申告の便利ツール

節税効果の高い青色申告ですが、記帳や確定申告時の書類作成はハードルが高いところです。提出期限内に確実に申告できるよう、必要事項を入力するだけ書類を自動作成してくれるツールや会計ソフトの導入を検討してみるのもよいでしょう。自分で帳簿を付けることにより財政状態にも明るくなります。

青色申告ソフト
最近のソフトは複式簿記の知識がなくても申告に必要な書類をつくることができるよう開発されているものが多く、入力も書類作成も操作が優しいものが増えています。ソフトには毎月定額の利用料を支払ってクラウドで管理するタイプと会計ソフトを特定のパソコンに入れて使うインストールタイプがあります。

クラウドタイプは、パソコンの状態に関係なくどこからでもアクセスして使えます。パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットと連携できたり、領収書などの自動登録ができたり、新しい機能が追加されていく頻度も高いです。

インストールタイプは、専用のパソコンに導入するため、セキュリティーの面で信頼度が高いといえます。ネット環境がないところでも利用できます。また、一度購入したらそれ以上の費用がかからないため、同じ機能を長期的に使い続けたい場合はコストを抑えることができます。税制改正に対応するバージョンアップ版を提供してくれるソフトを選んでおくと安心です。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」
確定申告書などの書類が作成できるサイトです。作成した申告書はe-Tax(電子申告)を利用してメールで送信、印刷して郵送もできます。日々の記帳を自分で整えておける場合、確実に申告できるので便利です。

最大65万円の控除を受けられることから、スモールビジネスや個人事業主には金銭面の手助けともなる青色申告特別控除。帳簿方法が複雑な印象を受けるかもしれませんが、今回紹介した便利ツールを活用しながら青色申告に挑んでみてはいかがでしょうか。また、2020年分からは電子帳簿保存にしてe-Taxで申告をしないと、最大65万円の控除額が55万円まで下がってしまいます。すでに青色申告を活用しているビジネスオーナーは注意しましょう。

執筆は2019年11月11日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash