事前に備えておきたい、2020年問題とは

2020年に開催される東京大会を楽しみにしているという人も少なくないかもしれません。一方で企業では「2020年問題」と呼ばれる2020年を中心に発生する諸問題への懸念から対策が進められています。

今回は、中小ビジネスオーナーを対象に2020年問題とその影響、備え方を説明します。

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2020年問題とは

「2020年問題」には具体的な定義があるわけではなく、2020年を中心に発生することが考えられる諸問題の総称です。人手不足をはじめとする雇用問題、東京大会を目前にした首都圏の地下の高騰や空き家の問題、2020年の教育改革への対応、オフィスで長く使われてきたOSのサポート終了をはじめとするIT関連の問題など、さまざまな問題が2020年問題に含まれます。

業界を問わずに対応を検討したいのが雇用問題とIT関連の問題です。現在すでに団塊の世代が退職し、それに続くバブル世代や団塊ジュニア世代が高齢化し、若者の雇用がままならず、従業員の年齢層のばらつきを感じているという経営者もいるかもしれません。このようなばらつきは高齢化した従業員の処遇の問題、正規・非正規雇用の問題、人手不足、ワークライフバランスの実現といった問題や課題に発展しかねません。

IT関連の2020年問題については、ユーザー数の多いOSのサポートが終了することに加えて、2020年に東京で世界的なスポーツイベントが開催されることからサイバー攻撃が増加するのではという指摘もあります。

2020年問題の概要を把握したところで、ここからは2020年問題が中小企業の事業に与える影響、2020年問題への備え方について順を追って説明します。

2020年問題が与える影響

2020年問題は中小企業の事業にどのような影響を与えるのでしょうか。内部的な影響、外部からの影響に分けてみてみましょう。

2020年問題の内部的な影響

内部的には多くの企業で層の厚いバブル世代と団塊ジュニア世代が高齢化します。日本型の終身雇用と年功序列を慣例としている企業では賃金負担が大きくなる可能性があります。また、従業員が高齢化し、人手が足りなくなる可能性があり、人手不足から従業員のワークライフバランスを確保するのが難しくなるかもしれません。人手を増やすことも考えられますが、金銭的な負担が増します。さらに人手不足は必ずしも金銭で簡単に解決できる問題ではありません。新しく採用した人材が企業風土や仕事に慣れるのには時間がかかります。健全な経営には経営者と従業員の健康と仕事に対する満足感が欠かせず、雇用問題への対処はまったなしです。

もう一つ、内部的な大きな影響としてITシステムへの影響があります。多くの中小企業でも使われているWindows 7とOffice 2010のサポートが終了します。サポートが終了しても使い続けることはできますが、セキュリティー更新プログラムが提供されず、業務に欠かせないコンピューターや事業の根幹を支えるITシステムを危険にさらすことになりかねません。コンピューターやサーバーがウィルスに感染などすると、自社のみでなく、取引先やお客様などにも多大な迷惑がかかります。2020年に東京大会が日本で開催されることから日本に注目が集まり、企業に対するサイバー攻撃を懸念する声もあります。

2020年問題に起因する外部からの影響
外部からの影響としては、取引先の人手不足やIT関連の問題により今までのようにスムーズに取引ができなくなる可能性があります。すでに宅配料金の値上げなど、外部の企業で発生している人手不足の影響を受けているという経営者も少なくないでしょう。また、悪意はなくても取引先のコンピューターやITシステムがウィルスに感染して、自社に飛び火するようなこともないとはいえません。

このような2020年問題の一般的な影響に加え、業種に特有の影響もあります。不動産業では高騰した地価が東京大会を境にどう転じるか、空き家の増加が事業に影響を及ぼすでしょう。教育産業では2020年の教育改革を視野に事業を計画し、商品やサービスを提供していかなければなりません。

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2020年問題への備え方

2020年問題は深刻な問題ですが、事前に対策をとれるものも少なくありません。ここでは雇用問題とIT関連の問題という二つの問題への備え方を説明します。

雇用問題への備え方
企業内での人員の偏りは一朝一夕に解決できるものではありません。年功序列や終身雇用を続けていくのが難しい場合、真摯に従業員とコミュニケーションし、今後の方針や対策について話し合い、時間をかけて制度や企業風土を変えていく必要があります。

人手不足については、安易に人員を増やす前に業務の自動化を検討してみるとよいでしょう。コンピューターやインターネットが広く使われるようになって20年、ビッグデータの蓄積により近年情報処理技術は飛躍的に向上しました。中小企業でITの専門家がいなくても使える業務自動化のためのソフトウェアも出てきています。単純なデータ入力はもちろん、スクリーンに表示された対象の形状や色を認識したり、定型処理をプログラムに覚えさせたり、自動化の対象は想像を超えるものがあります。業務の自動化については「業務を自動化する、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とは」の記事も参考にしてください。

人材を探す際には、若い世代のほかに、業界経験が豊富な団塊世代から人材を探してみるのも一つの手です。一度引退していても再び仕事に取り組んで人生を充実させたいという人も少なくありません。そのほか、子育てが一段落して社会に貢献したいと考えている女性も戦力になるでしょう。子育てでキャリアにブランクができてしまい、企業が採用を敬遠したり、女性自身が仕事に戻ることに躊躇していたりするかもしれませんが、生活と仕事が両立して軌道に乗ると事業に欠かせない人材に成長するはずです。

IT関連の問題への備え方
2020年になる前に一度社内で利用しているコンピューター、スマートフォン、タブレットデバイス、サーバーなどすべてのIT関連の機器の状態を再点検することをおすすめします。特にネットワークにつながった機器はウィルスに感染する可能性が高く、感染範囲を拡大しかねず、入念に点検する必要があります。

機器のリストアップからはじめて、OSやインストールされているソフトウェアのバージョンはメーカーのサポート対象のものか、ウィルス対策はされているか確認していきます。個人に任せるのではなく、可能であればダブルチェックをして徹底的に点検するのが理想的です。サポート対象でなくなっているもの、ウィルス対策が万全でないものが見つかった場合、費用はかかりますが、置き換えを検討してください。万が一ウィルスに感染して、自社、お客様、取引先に被害が出た場合、何倍もの費用がかかり、これまで築きあげてきた信用を失うことになります。

ITについて詳しくない、点検がきちんとできているのか不安だという人は、ITの専門家やセキュリティー監査サービスを提供する企業などを頼りましょう。

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本記事では中小ビジネスオーナーを対象に、2020年問題についてその影響と備え方も合わせて説明しました。「問題」といわれると、怖いものとして身構えてしまう人もいるかもしれませんが、事業の状態を見直して改善するよい機会ととらえることもできます。業種によっては問題をビジネスチャンスに転換できるかもしれません。本記事をきっかけに2020年問題への備えを万全にしてください。

執筆は2019年9月20日時点の情報を参照しています。
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