OSS(Open Source Software)とは

ソースコードが公開されていて無償で利用できるOSS(Open Source Software、オープンソースソフトウェア)の名前を耳にしたことがあるという人も少なくないことでしょう。OSSの魅力は無償であることだけではありません。

今回はOSSの利用に興味を持っているビジネスオーナーを対象に、OSSとは何かからはじめ、OSS導入のメリット、課題、スモールビジネスでの活用方法を説明します。

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OSSとは

OSSが広く知られるきっかけとなったのは、1990年代に当時フィンランドのヘルシンキ大学の学生だったリーナス・トーバルズが開発し始めたオペレーティングシステムLinuxといってよいでしょう。Linuxは、WindowsやMac OSのようにさまざまなアプリケーションを動かすための基本となるソフトウェアの一つです。LinuxをはじめとするOSSと呼ばれるタイプのソフトウェアのソースコードは公開されているので(オープンソース)、ライセンスに基づき改変したり再配布したりできます。ユーザーとしては、誰もがダウンロードして無償で利用できます。

OSSというと、無償(フリー)で利用できるフリーウェアと混同されることも少なくありませんが、両者は似て非なるものです。フリーウェアの中にはソースコードが公開されていないものがあり、そのため自分の用途に合わせてソースコードを書き換えたり、バグを見つけた人が開発者コミュニティーや開発元の組織に修正案のコードを提出したりできません。また、開発が終了してしまうと、ソフトウェアがアップデートされなくなり、ソフトウェアを使えなくなってしまう可能性があるだけでなく、脆弱性を抱えることにもつながります。

OSSはLinuxのようなオペレーティングシステムに限らず、日々の業務に欠かせない文書作成や表計算といったオフィスアプリケーションやウェブサイトを閲覧するためのブラウザのほか、ウェブサイトをホストするサーバーアプリケーション、データを保存するデータベースなどさまざまなOSSが存在します。プログラミング言語やプログラムの開発環境でさえオープンソースのものが多数あります。近年では人工知能を作ったりビッグデータを処理したりするためのライブラリやフレームワークも国際的な大手IT企業から提供されるようになりました。ありとあらゆる種類のOSSが提供され、必要な環境をすべてOSSで揃えることも不可能ではありません。

OSSを導入するメリット

多くの企業でコスト削減の観点からOSSの導入が検討されてきました。OSやオフィスアプリケーション、グラフィックスアプリケーション、サーバー関連のアプリケーションの出費を考えると頭が痛いという人も少なくないでしょう。これらの一部でもOSSに置き換えることができたら大きく出費を減らすことができます。OSSを直接使っていない人でも、ウェブサーバーのホスティングサービスがOSSを利用しているため、間接的にOSSを利用している可能性は十分にあります。ホスティングサービスの中にはOSSを利用することでリーズナブルな価格でサービスを提供しているものも少なくありません。

コスト面以外でも、信頼性や安定性の観点からOSSを導入するメリットがあります。長年支持されている商用ソフトウェアと単純に信頼性や安定性を比べることはできませんが、OSSの中には国際的な大手IT企業や堅固なコミュニティーによって長年開発が続けられ、信頼性や安定性の観点から安心して利用できるものは多く存在します。

また、自社にITに詳しい従業員がいる場合、業務に利用しやすいようにOSSに改変を加えることもできるでしょう。

OSSの課題点

メリットの多いOSSですが、扱いが難しいことも知っておきたいところです。

まず、OSSには商用ソフトウェアのような充実したサポートサービスがありません。不具合があった場合は基本的には自分で対処しなければなりません。説明書や関連資料をインターネット上で読むこと、コミュニティーに助けを求めることはできますが、日本のOSSでない限り、やりとりは英語になります。OSSの導入や運用を支援する有料のサービスを提供する企業もありますが、コスト削減を期待してOSSを導入する場合、どちらがコスト削減につながるのか十分に検討する必要があります。

OSSの認知度はあがりつつあり利用も広まっているものの、スモールビジネスではまだ一般的ではありません。長年の開発により、アプリケーションのファイル形式の互換性や表示の違いなどは少なくなりつつありますが、ゼロとは言い切れません。どこまでを許容範囲として、コストと便利さのどちらを優先するのかを基準にソフトウェアを選定してください。頻繁に取引先とファイルを交換する場合などはより慎重な検討が必要です。

また、これは課題ではありませんが、OSSに改変を加えて再配布する場合は、特にライセンスに注意する必要があります。OSSのライセンスによっては再配布の対象である派生物も同様のライセンスが適用され、ソースコードの公開が義務付けられ、すべての人が改変および再配布可能になるものがあります。

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スモールビジネスのOSS活用方法

OSSに興味はあるものの、サポートの不安などからOSSの導入に少し尻込みしてしまうという人もいるかもしれません。でも心配はありません。業務に支障の少ない部分で少しずつOSS取り入れることで、OSSの活用方法をみつけることができます。

オフィスアプリケーションをOSSにしてみる
全社、全コンピューターのアプリケーションを一気に入れ替えるのではなく、普段使っているコンピューターに、たとえばオフィスアプリケーションのOSSをインストールして、時間に余裕のあるときに普段使っている商用オフィスアプリケーションの代わりに使ってみてはいかがでしょうか。しばらく使ってみて業務に支障なく使えるようであれば、徐々にこれまで利用してきた商用オフィスアプリケーションを置き換えていくとよいでしょう。昨今商用オフィスアプリケーションは永続ライセンスのものだけでなく、年単位で課金されるものも出てきました。OSSを導入することで固定費を減らすことができるでしょう。

新しく導入してみたいアプリケーションをOSSで試してみる
RPAのような、比較的効果で試用版が手軽に手に入りにくいアプリケーションを新しく導入・検討する場合、OSSで試してみるのは一つの手です。

多くのOSSはウェブサイトでソースコードやコンパイル済みのプログラムが公開されています。気に入ればそのまま使用を続け、商用アプリケーションを試してみたいという場合でもOSSの利用経験がソフトウェアを検討する際に役立つことでしょう。

古いコンピューターをOSSで再利用する
OSSの中でもオペレーティングシステムは導入のハードルが高くなりますが、オフィスに眠っている古いコンピューターに軽量のLinuxとブラウザなど必要最低限のOSSをインストールすれば、簡単な事務作業に使えるコンピューターとして復活させることができるかもしれません。手間はかかりますが、資源を大事にし、さらに新しくコンピューターを買うよりも安くつくかもしれません。

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2000年代はじめからOSSが活用されるようになり、歴史のあるOSSはすでに誕生から20年を迎えようとしています。商用ソフトのようなサポートがないという難しさはありますが、安定性や信頼性においては長い年月をかけてこなれてきたOSSも少なくありません。ぜひメリットの多いOSSを業務に活用してください。

執筆は2019年9月3日時点の情報を参照しています。
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