カスタマーサクセスとは? 中小ビジネスに導入したい顧客ロイヤリティー向上の一手

企業や店舗において、お客様に買い物の「成功体験」を提供するカスタマーサクセス。BtoB、BtoCを問わず、カスタマーサクセスは利益や企業価値の向上に大きく貢献する重要な機能です。スモールビジネスにカスタマーサクセスを導入する際のポイントや、カスタマーサービスとの違い、具体例を紹介します。

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カスタマーサクセスとはどんな仕事か?

カスタマーサクセスとは、「お客様の成功」を実現する職務や部署を指します。企業や店舗がお客様にただモノを売るのではなく、お客様がなぜモノを買い、そのモノによって何を実現したいかを考え、共にその成功を実現することがカスタマーサクセスの仕事です。

企業や店舗がカスタマーサクセスを導入する目的は、お客様の継続率やライフタイムバリュー(LTV、顧客生涯価値)の向上です。カスタマーサクセスを提供することにより固定客の数や顧客単価、顧客ロイヤリティーがアップすれば、売り上げや利益も比例して上がります。

つまりカスタマーサクセスは、販売に付随して提供できるサービスであり、お客様の心をつかみ良好な関係を築いていくためのマーケティング手法でもあるということです。海外ではカスタマーサクセスの専門家を求める企業も増えており、その重要性は幅広い業界で注目されています。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いとは

カスタマーサクセスと似た名称の仕事に、カスタマーサポートというポジションがあります。しかしカスタマーサクセスが目指すのは過程のサポート(支援)ではなく、サクセス(成功)という結果です。

お客様にとっての買い物の成功は、満足度とも換言できます。ただ何を買うかではなく、お客様が何によって要望が満たされたと感じ、商品や企業への満足を感じるのかを知り、その達成というゴールに向けて、声援やアドバイスを送るだけでなく、マラソンの伴走者のようにランナー本人(=お客様)と共に進むことがカスタマーサクセスの基本的な考え方です。

もっと噛み砕いた表現をすれば、聞かれた質問だけに答えるのがカスタマーサービスで、共に考え、共に結論を出していくのがカスタマーサクセスといえるでしょう。

カスタマーサクセスの例

たとえば、アパレル販売店など小売店でもカスタマーサクセスの概念を生かしたサービスが可能です。小学生の子どもの卒業式に着るスーツを探している人が買い物に訪れた際、ただ一般的なフォーマル衣類の売り場を案内するだけの受動的なカスタマーサポートのサービスでは、お客様が何を本当に求め、何によって満足感を得るのかがわかりません。

この場合、若々しく見える服が欲しいのか、他のシーンでも着回せる服が欲しいのか、体型をカバーする服が欲しいのか、お客様の求める「成功」が何であるかを丁寧に探り、能動的に一緒に追求するのがカスタマーサクセスの考え方です。

時にカスタマーサクセスはお客様自身が気づいていない要望を無意識の中から引き出し、そこに解を出すことで、ただ商品を購入する以上の満足感をお客様に与えることが可能です。カスタマーサクセスにより「あの店に行けば何か良い答えが得られるはず」という信頼感を抱いてもらうことは、固定客をつかんで離さない継続的なビジネス効果に直結していきます。

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なぜ、カスタマーサクセスが求められているのか

そもそもカスタマーサクセスの考え方が普及し始めたのはSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)業界といわれています。クラウド経由でのソフトウェアやプラットフォームのサービスを提供するSaaS業界では、月額などの定額制度によるサブスクリプション型のサービスが主流であるため、企業にとってはクライアントと良好な関係を維持し継続的にサービスを使ってもらうことが重要です。

そこで求められてきたのが、カスタマーサクセスの考え方です。継続したサービス利用のためには、便利で手頃なサービスであるだけでなく、個々のクライアントに適した使い勝手の良さや快適さが重視されます。カスタマーサクセスの概念に従って、企業側がクライアントの意向に寄り添い、そのサービス利用により仕事効率の劇的な改善を図ったり、職場のコミュニケーションをスムーズにしたりといった「求める効果」につなげていくことは、企業とクライアントの関係をより密接にします。

ただ商品やサービスを売るのでなく、お客様が求める結果を出すところまで寄り添うことができれば、他の商品やサービスへと目移りされる可能性は格段に下がります。お客様から見たカスタマーサクセスは、製品やサービスだけでなく企業の魅力になり、信頼を高める要素にもなり得ます。

カスタマーサクセス導入の具体的なメリット

SaaS業界に限らず、カスタマーサクセスの導入はお客様に多くのメリットをもたらします。

・困りごとを解決できる
・相談できる相手がいるという安心感を得られる
・仕事や生活が効率化される

カスタマーサクセスの充実は、同時に企業側のメリットにもなります。

・1人ひとりの顧客満足度が高まり、密接な関係を構築できる
・ロイヤルカスタマーや継続顧客の増加につながる
・クロスセル、アップセルの増加につながる
・クオリティーの高いサービスで、企業価値や評価が向上する
・同じ商材を扱う競合他社にも、サービスにより差をつけられる
・カスタマーサクセスの過程で得た情報を、サービス改善や商品開発に生かせる
・お客様の成功にコミットすることで、従業員のモチベーションが高まる

個人事業主や中小企業などスモールビジネスにおいてカスタマーサクセスを導入する際、デメリットとしては、カスタマーサクセスを担当する人材のトレーニングの時間やコスト、あるいはカスタマーサクセスのための情報管理ツールの導入コストなどが考えられます。固定客の増加や顧客ロイヤリティーの向上による利益増などの予測と比較し、検討する必要があります。

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成功する「カスタマーサクセス」の秘訣

カスタマーサクセスは、あらかじめ用意した平均的な回答をお客様に提供することではありません。個々のお客様の状況に即して、最適な解を臨機応変に提供することが求められるため、まずお客様自身をよく知ることがカスタマーサクセスの鍵となります。お客様が個人なら、家族構成、仕事、生活サイクル、価値観など、企業や店舗が相手なら、事業や従業員の規模、顧客層、業界など、お客様の立場で考える材料をコミュニケーションを通して集めます。つまり、丁寧なコミュニケーションはカスタマーサクセスの第一ステップといえます。

情報を記録することで顧客関係強化

カスタマーサービスにおける密なコミュニケーションには、副次的なメリットもあります。収集した情報を記録し、データベース化していくことで、お客様の傾向や業界の動向を把握し、次に発生し得る課題の予想も可能になるからです。これによりお客様が困難に遭遇して立ち止まる前に「こんなことでお困りではないですか?」「今後こうした需要が予測されます」といった提案型の営業もしやすくなります。その上、お客様サイドでは「顧客として大事にされている」「我が社を重要なパートナーと考えてくれている」と実感することができ、さらなる関係強化の実現という良いサイクルが生まれます。

現代社会が求めるカスタマーサクセス

さらに、カスタマーサクセスをあらかじめサービスの一部として売り込むことも可能です。たとえば使い方の難しいIT機器や健康器具、キッチン用品など、お客様から使い方の問い合わせを待つのではなく、最初からセッティングや使用ガイダンス込みのパッケージとして販売することで、競合店と差をつけることができます。特に、高齢化や独居世帯の増加が進行する現代においては、お金を払って「わからないことを相談できる」という安心感を必要とする人は少なくありません。商品を手元に届けるだけでなく、お客様が機器を実際に使えるようになり、必要な効果や結果が得られるというカスタマーサクセスは、今後さらにサービスとしての価値を増していくことが予想されます。

執筆は2019年9月24日時点の情報を参照しています。
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