商品購入と同時に現金引き出しができる?キャッシュアウトとはなにか

近年新しく広まりつつある金融サービスの一つに、「キャッシュアウトサービス」があります。このサービスは、買い物にきたお客様が商品を購入するだけでなく、レジなどから現金の引き出しができるものです。銀行に代わり現金ニーズを満たすことでお客様の利便性をあげ、集客につながることが期待できます。

この記事では、キャッシュアウトサービスの概要と特徴について詳しく解説していきます。

目次



キャッシュアウトとは?

キャッシュアウトとは、金融機関が発行したデビットカードやQRコードなどを使って、スーパーなど小売店舗のレジで自分の銀行口座から預金を引き出せるサービスのことです。通常、口座から現金を引き出す際には、銀行やコンビニなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)を使う人が多いでしょう。ただこの場合には、買い物に行く前に現金が足りなかったら一旦ATMを探す手間が発生します。キャッシュアウトサービスを使えばわざわざ現金を準備しなくても、買い物でレジに並ぶついでに預金を引き出すことが可能になります。

アメリカをはじめとする海外では、少額の現金を引き出す目的でキャッシュアウトが一般的に使われていますが、日本では法規制の問題があったため最近までサービス提供ができていませんでした。しかし、2017年4月に銀行法の施行規則改正により規制が緩和され、その後2018年4月より日本電子決済推進機構がJ-Debit「キャッシュアウトサービス」の取り扱いを開始しました。現在では大手スーパーのイオンが導入しているほか、東急電鉄では駅の券売機で現金を引き出すことのできるサービスを実施しています。

日本では法改正から日が浅いため、まだまだサービスを提供しているところは少ないものの、今後広がっていくことが期待できます。

参考:「銀行法施行令等の一部を改正する政令等(案)」の公表について(金融庁)

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サービス提供の方法について

J-Debitのキャッシュアウトサービスを提供したい場合、事業者はまず加盟店になる必要があります。引き出し可能な金額は、5万円の範囲内で加盟店が決められるほか、利用時にかかる手数料も自由に設定可能です。またサービスの利用可能時間や取り扱い場所も加盟店に任されているなど、かなり柔軟なサービス運用が可能となっています。

参考:加盟店のレジ等で現金が引き出せる J-Debitのキャッシュアウトサービス(2018年3月8日、ペイメントナビ)

サービスを提供する方法は2種類あります。

  1. 買い物と同時にキャッシュアウト利用
  2. キャッシュアウトだけ利用

一般的な使い方として想定できるのは(1)の方法です。加盟店であるスーパーなどに来店したお客様は、財布の中に現金がなかったとしてもその場でお金を下ろせるので、手持ちを気にする必要がなく利便性が上がるでしょう。加盟店は、利用客の利便性を上げることで集客につながり、売り上げアップが期待できます。

一方(2)は、直接小売業の売り上げに直結する利用方法ではありませんが、銀行の支店が少ない地域に金融サービスをもたらすことに貢献できます。近年は金融サービスのオンライン化などにより、人口の少ないエリアにある支店を閉鎖・統廃合する動きが続いています。その結果、地域によっては住民が必要な金融サービスを受けられないという事態も起こっています。特に、高齢者など遠方の支店まで移動するのが難しい場合もあるでしょう。こうした地域においては、銀行に代わってキャッシュアウトができるお店が近隣住民のニーズを満たすことが期待されています。

サービス利用のイメージ

利用するお客様から見た場合、以下のような流れでキャッシュアウトを利用することで、買い物の支払いと現金引き出しが同時にできます。

  1. スーパーなどで商品を選び、レジに向かう
  2. 商品のバーコードを読み取ると同時に、キャッシュアウトしたい金額を指定する
  3. デビットカードの暗証番号を端末に入力する
  4. 買い物代金を差し引いたキャッシュアウト金額を受け取る
  5. 商品を持ち帰る

こうすれば、仮に現金をまったく持っていなかったとしても問題なく買い物ができ、さらに財布に現金を補充することが可能です。

事業主からみたキャッシュアウトのメリット・デメリット

サービスを提供するメリットとデメリットを紹介します。

メリット

最も大きいメリットは、来店するお客様にとっての利便性を良くすることで、集客効果が期待できることです。最近は電子マネーやQR決済などが広まり、キャッシュレス化の時代と呼ばれていますが、日本ではまだまだ現金決済が多いようです。

経済産業省が発表した資料によると、2016年時点の日本のキャッシュレス決済比率は20%程度で、80%は現金で決済されているという結果が出ています。

キャッシュアウトサービスを導入すれば、現金支払いが多いお客様は財布の中の現金を気にしなくても買い物ができるようになります。スーパーなどでは、これまで店舗内にATMを設置するなどの方法によって、現金のニーズを満たしてきましたが、キャッシュアウトサービスはATMより導入コストが安いという利点もあります。

さらに、加盟店は自由に利用者手数料を設定することができるので、手数料収入を得られることもポイントです。ただし、あまり高い金額を設定すると利用者自体も減ってしまいかねないので、利用しやすい水準で設定するよう気をつける必要があるでしょう。

デメリット

デメリットとしては、レジが混雑してしまうことが考えられます。特にサービスを導入した直後は、レジの従業員もお客様も利用に慣れていないため、利用に時間がかかり行列ができてしまう可能性もあります。

また、キャッシュアウトはまだまだ日本で普及していないサービスです。サービス提供を開始したからといって、すぐに利用客が増えるとは考えづらいでしょう。広告やソーシャルメディアなどを通してお客様認識してもらい、当たり前に利用してもらうための取り組みを工夫する必要があります。

加盟店加入できる日本のキャッシュアウトサービス

2020年5月時点で、日本で加盟できるキャッシュアウトサービスは、日本電子決済推進機構のJ-Debitキャッシュアウトサービスです。実際に申し込む際には、金融機関やクレジットカード会社などの決済情報処理センターと契約して加盟店にならなければなりません。

加盟店になりたい場合、まずは日本電子決済推進機構のホームページから問い合わせ、コンサルティングを申し込みます。日本電子決済推進機構は申し込み者の情報や要望から最適な金融機関や決済情報処理センターを提案してくれます。契約後、システム導入・設置が完了したら、サービスを開始できます。サポート体制も充実しており、利用している上で不明点などがあればヘルプデスクで回答してくれます。

キャッシュアウトサービスはまだまだ発展途上ですが、便利に買い物できるようにすることで他店と差別化でき、お客様の囲い込みにつなげることができるでしょう。導入にあたっては、機構からのコンサルティングを十分活用し、効果的なサービス提供方法を検討する必要があります。

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執筆は2020年5月5日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash