人生100年時代で変わる経営者と従業員の関係とは?

長寿化・高齢化が進み、100歳まで生きることが珍しくなくなる時代が来ています。厚生労働省の発表によれば、2018年9月時点で100歳上の人口は7万人弱と毎年最多を更新しています。また、2050年までに100歳以上の人口は50万人以上を突破する見込まれています。長寿化は働き方にも大きく影響します。雇われる側だけでなく、人を雇う側である経営者にとっても人生100年時代に無関係ではいられません。

今回は経営者の視点から人生100年時代を乗り切るために、知っておきたいヒントを紹介します。

参考:
100歳以上、6万9785人 48年連続最多更新(2018年9月14日、朝日新聞)
2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について(経済産業省)

人生100年時代とは

人生100年時代は、日本でもベストセラーになったリンダ・グラットン著「LIFE SHIFT(ライフシフト)」によって広く知られるようになった考え方です。長寿化することで、これまでとは異なるキャリア形成や生き方を考える必要があることを、この本では読者に提唱しています。日本もそれぞれの立場で人生100年の時代を前提に生きる戦略を立てなければいけない時代になっているといえます。

参考:LIFE SHIFT(東洋経済新報社)

従業員にとっての人生100年時代

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まずは従業員、つまり雇われる立場の視点から人生100年時代に何が変わるのかを見ていきましょう。人生100年時代では、一生一つの会社や働き口に留まることは難しくなると考えられます。

従来のライフモデル

終身雇用制度が終わりつつあるといわれている現代では、学校を卒業後に就職し、同じ会社で定年まで勤めることが段々と減ってきています。少し前までは、高校や大学を卒業してそのまま一つの会社に就職して定年まで勤めあげる、つまり「教育→仕事→引退」というライフプランを経験する人が珍しくありませんでした。

昭和の時代を支えた、新卒一括採用と終身雇用制度。しかし、社会の変化や働き方の多様化により、従来のこれらの制度は機能しづらくなってきています。

人生100年時代のライフモデル

人生100年時代のライフモデルでは、学校で学び会社に就職して60歳で定年を迎えて引退生活に入るという従来のライフプランが難しくなります。多くの人が60歳を超えても何らかのかたちで働き続けるでしょう。10代から20代にかけて学校で身につけた知識・技能だけで一生の職業生活を乗り切ることも難しくなります。

これから多くの人に訪れる変化として、下記の3点が考えられます。

・リカレント教育などを通して生涯学習を続ける
・マルチステージ化
・ビジネスの寿命より人間の寿命の方が長くなる

リカレント教育とは学校を卒業して社会に出た後も、再び教育を受けたり、学びなおしたりすることです。長寿化する社会では、キャリアを継続していくためには過去に身につけた知識・技能だけでは不十分になることも珍しくありません。そのため時代に合わせて学び続けていく姿勢がより一層、求められます。

またマルチステージ化では、前述の「教育→仕事→引退」というな生き方ではなく、「教育→仕事→教育」「教育→仕事→休暇→仕事」など柔軟にそれぞれの人生に応じてさまざまな経験をしていくことになるのが当たり前になるかもしれません。また仕事も一つの働き口だけでなく、複数の働き口から給与をもらうことも珍しくなくなる時代になるのではないでしょうか。

そしてビジネスモデルの寿命も短くなると考えられます。人間の寿命の方が企業の寿命より長くなることもあるため、一つの企業だけに頼らず個人で生きていく力を身につける必要性が高まります。

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経営者にとっての人生100年時代

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経営者も人生100年時代のマネジメントや生き方を考える必要があります。

生産人口の高齢化と人手不足への対応

現在日本では、生産年齢人口つまり働き手となる世代の不足が大きな課題になっています。従来のように新卒一括採用で十分な人材を確保することは難しくなっています。

参考:人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る(2018年7月11日、日本経済新聞)

経営に必要な人材を新卒に限らず、さまざまな属性の人に雇用の門戸を解放しなければ採用難を乗り切れない時代がやってきています。

ギグ・エコノミー

ギグ・エコノミーという言葉を聞いたことがあるかもしれません。ギグ・エコノミーとは単発や短期の仕事を基盤とした経済のことです。ギグとはもともとライブハウスなどで行う1回限りの演奏を意味する言葉です。

プロジェクトや事業に必要な人材を集め、終わったら解散する働き方は働く側にとっても柔軟な働き方ができるメリットがある一方で、経営者にも必要なときに臨機応変に人材を集められるというメリットがあります。

クラウドソーシングなどのプラットホームから必要な人材を必要な時に集めるのは、ITや映画制作などの一部の業界では既に利用されています。福利厚生や賃金、労働環境などの課題もありますが、今後はさまざまな業界に広がっていくことが考えられます。経営者は外部の人材をうまく取りまとめていくマネジメント力が求められるようになるでしょう。

参考:ギグエコノミービジネスが拡大 日本でも定着するか?(2019年3月7日、Yahoo!Japanニュース)

従業員に働き方の選択肢を提供する時代へ

「副業解禁」という言葉が2018年頃からよく聞かれるようになりました。自由な働き方や、将来会社に頼れなくなったときのための備えとして副業に興味をもつ人が増えています。そのため従業員に働き方の選択肢を提供しなければ、採用や雇用の継続が難しくなるケースも考えられます。従業員の副業を認めることは、社内の活性化にもつながるでしょう。

また働き方の選択肢を増やし、複数の働き方を行き来できるような柔軟な人事システムを取り入れることも、今後求められるのではないでしょうか。

会社の寿命より人間の寿命の方が長い

インターネットの普及やグローバル化の影響により、技術やサービスの寿命が短くなっています。そして企業の寿命の方が人間の寿命よりも短くなることも珍しくなくなりました。2018年に倒産した企業の平均寿命は23.9年です。そのため経営者自身も一つの会社やキャリアに依存できない時代です。経営者も従業員も会社の寿命と自分の人生の寿命の長さを意識した人生設計をする必要が今後、ますます増えていくことが予想されます。

参考:2018年「業歴30年以上の『老舗』企業倒産」調査(株式会社東京商工リサーチ)

経営者もポートフォリオ経営を意識する時代へ

ポートフォリオは金融の世界では、株や債権などの金融商品の組み合わせのことを指します。さまざまな働き方を組み合わせる複業化、つまりポートフォリオワークが当たり前になる時代がやってきています。そして経営者もまたポートフォリオ型の働き方や経営をしていくことで複雑化する人生を乗り切ることを意識しなければいけない時代になります。経営者も経営の分散、働き方の分散を従業員と同じように意識しマルチステージ化する社会を生き抜く必要があるといえます。

長寿化は社会の仕組みそのものを変え、多様化させます。「教育→仕事→引退」という単線型の人生から複線型の人生が当たり前になるでしょう。従業員だけでなく経営者も長寿化によって多様化される社会を生き抜くための人生戦略と経営戦略が求められます。経営者と従業員の関わり方もより流動的になっていくでしょう。

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執筆は2019年4月17日時点の情報を参照しています。
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