スモールビジネスも積極的に活用している!融資の基本知識

ずっと温めてきたアイデアを形にするために、あるいはふと舞い込んできたチャンスをものにするために、など開業の経緯は人それぞれでしょう。理由は何にしても、いざビジネスオーナーの道を進むと決めたなら、まず必要になるのが開業資金です。自己資金が不足している場合の資金調達方法はさまざまですが、この記事では融資に注目をします。融資の概要、申し込む前の準備作業、融資を提供している企業・団体などを今一度確認しておきましょう。また、ここでは申込時の負担を軽減してくれるサービスも紹介します。

そもそも融資とは

融資とは大辞林第三版の説明を引用すると、「資金を融通して貸し出すこと」 とあります。

引用:融資(ユウシ)とは(コトバンク)

返済義務のない補助金や助成金とは異なり、返済することを前提として借り入れをするので、利息がつくのも特徴です。融資を提供しているのは都市銀行や信用金庫を含む金融機関や、日本金融政策公庫をはじめとする公的機関、自治体や商工会議所などさまざまです。融資と聞くと「審査が厳しい」という印象を受ける人も少なくないかもしれませんが、提供先によっては審査の厳しさや利率などの特徴も異なるものなので、融資を受けると決めたら自分のビジネス規模に合う融資を見つけることが大切でしょう。

融資の種類と特徴を見極めよう

ここでは融資の種類を説明しつつ、自分の店舗を開業しようと考えているスモールビジネスオーナーに向けて、事業実績がなくても受けられる融資に着目します。

金融機関が提供する融資

仕組みとして利息収入を頼りにする金融機関の融資。万が一融資先が倒産してしまい回収ができなくなると大きな損失を抱えることとなります。このような損失が生じてしまわないためにも、ガイドラインに則って金融機関は借り手の返済力を判断します。もちろん返済力だけではなく、借り手の信用情報、金額の妥当性、そして融資を受けることで生み出せる経済効果、事業内容なども重要視される項目です。

金融機関とひとくくりにいっても、融資の特徴は金融機関の種類によっても異なります。金融機関は大きく3種類に分けることができるでしょう。

  • 都市銀行
  • 地方銀行
  • 信用金庫

なかでも都市銀行は実績を重視する傾向にあるうえ、大企業を相手に高額の融資をメインに扱うこともあり、これからスモールビジネスを始めたいという人にはハードルが高いといえます。

一方で地方銀行や信用金庫はどうでしょう。

まず、地域に根ざしている地方銀行であれば、都市銀行と比較して審査が通りやすく、少額からでも相談しやすい傾向にあります。基本的には自店を開く地域の銀行を利用します。ただし、都市銀行より利率が高い傾向にある点には注意しておきましょう。地方銀行はこちらから検索できます。

地域に根ざした金融機関、という点では地方銀行と似た印象を受ける信用金庫ですが、地方銀行は利益を目的に運営される営利団体であることに対して、信用金庫は利益を地域の発展に使う非営利団体です。地域の活性化を目標として掲げていることもあり、個人事業主やスモールビジネスの創業融資にも好意的なのが特長です。しかしながら利率が地方銀行よりも高く設定されていることも少なくありません。近所の地方銀行と比較してみるのもいいでしょう。

また、民間の金融機関から利用できる事業融資は主に以下の三つです。

  • プロパー融資
  • 保証付融資
  • ビジネスローン

低金利での借入を特徴とするのがプロパー融資です。信用保証協会を挟まず金融機関から直接借入をし、返済ができなくなったときは金融機関が100%リスクを負います。銀行の貸し倒れリスクが高いことから数年の実績がなければプロパー融資を受けることは難しく、開業して間もない事業者が利用することはほとんどありません。ただし、日本政策金融公庫が提供するプロパー融資は例外といえるでしょう。

保証付融資は、万が一ビジネスがうまくいかず返済に遅れが生じたり、返済自体が難しくなったりした際に、信用保証協会が返済額を立て替えてくれる融資です。このように信用保証協会が保証人の役割を果たしてくれるため、保証付融資を利用する場合、担保や保証人の必要がないケースが多いようです。ただし保証を利用するためには、原則、保証料率に従い保証料を納めなければいけません。銀行が貸し倒れのリスクを負わない分、スモールビジネスや個人事業主でも利用しやすい融資になっています。前述の地方銀行や信用金庫、また自治体が提供する制度融資は保証付融資を中心に取り扱っています。

最後にあるビジネスローンは、無担保・無保証人でも受けられることや審査スピードの早さが特徴的ですが、プロパー融資と同様に実績が必要となるものがほとんどです。近年では開業して間もない事業主でも利用できるビジネスローンもあるようですが、基本的には開業資金調達に使われることはあまりないようです。

政府の金融機関からの融資

融資を検討する際に、銀行と合わせて視野に入れておきたいのが政府系機関からの融資です。ここでは日本政策金融公庫の融資に焦点を当てて説明をします。

日本政策金融公庫の大きな特徴は個人事業主やスモールビジネスなどを対象とした創業融資も提供しており、利率が低く、返済期間が長い点だといえるでしょう。信用保証協会は通さないため、プロパー融資といえます。

たとえば無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」は、新たに事業を始める人を対象とした制度で、利率は1.16%から3%弱となります。「新創業融資制度」以外にも35歳未満でビジネスを始める女性や55歳以上でビジネスを始めるシニア層を応援する「女性、若者/シニア起業家支援資金」などもあります。なお、なかには担保や保証人を必要とする融資制度もありますが、できるだけ希望に合うよう相談を受けてくれるそうです。詳しくは日本政策金融公庫のウェブサイトからチェックできます。

日本政策金融公庫からの資金調達は、申し込み日から短くても一カ月程度は見ておいたほうがいいでしょう。

参考:
金利情報(日本政策金融公庫)
新創業融資制度(日本政策金融公庫)

無担保・無保証人とは?
借入金の返済が難しくなるような結果はできれば避けたいところですが、万が一のことを考えて「無担保・無保証」の融資を検討視野に入れておくのも大切でしょう。

ここでは無担保・無保証人についておさらいしておきましょう。

融資を行う主体は、返済額が戻ってこないことを想定して、土地や建物などの物品で損害を補う担保や、債務を代わりに支払う保証人を必要とすることがあります。

一方で「無担保・無保証人」の融資を利用すると、返済が難しくなったときに大切な人が債務を肩代わりしたり、大きな財産を失ったりしなくて済みます。前述のように「新創業融資制度」であれば担保も保証人も不要です。このように「無担保・無保証人」を条件に入れてみるのもありでしょう。

自治体や商工会議所からの制度融資の金融機関からの融資

もう一つ検討視野に入れておきたい融資に、自治体や商工会議所が提供する制度融資があります。ご自身が店舗を開業しようと思っている地域の地方銀行や信用金庫の融資を調べる際に、管轄エリアの自治体や商工会議所の制度融資も確認しておくといいでしょう。

制度融資は自治体が金融機関や信用保証協会と連携して、スモールビジネスや個人事業主の資金調達を可能とする融資です。地方銀行や信用金庫などと同様に保証料を伴う保証付融資が主となるものの、民間金融機関の融資に比べて利率が低いのが特色です。

ただし自治体の制度融資の弱点として、融資実行までに時間がかかります。工程は次の通りです。

(1)融資の申し込みを受ける
(2)書類審査を行なった後、金融機関への融資のあっせん書を発行する
(3)申込者自身が指定された金融機関に足を運び、書類を提出する
(4)民間金融機関が信用保証協会に書類を送付する
(5)保証が決定すれば、信用保証協会が金融機関宛に保証書を発行する
(6)保証書を受け取った金融機関は申込者と契約を結び、融資額を指定の口座に入金する

審査書類が計三つの窓口に渡ることもあり、どうしても時間を要してしまいます。そのため、融資を急いでいる人には残念ながら向きません。基本的には2、3カ月ほどを見込んでおくといいでしょう。

スモールビジネスを対象とした自治体の制度融資として、東京都には「小規模企業向け融資」があります。保証人や担保は不要とされており、利率は1.9%からに設定されています。融資の限度額や融資期間などはこちらからも確認できます。

審査に通過するためにも!融資を受ける最低条件を把握しておこう

ここまでは金融機関や自治体による融資について説明してきました。どの融資を選ぶにしても、共通するのは審査に通らなければ融資が受けられないという点です。審査の条件は金融機関や融資の種類によって多少異なりますが、審査の通過は決して容易なものではなく、きちんとした下準備が非常に大切です。たとえば不備があるだけで落ちてしまう、ということも考えられるので、書類の記入から提出までは慎重に行う必要があるでしょう。なお、審査に通るためには、下記の条件もクリアしておくことを目指しましょう。

(1)自己資金がある
(2)公共料金や税金の支払いに未納や滞納がない
(3)金融商品の返済に遅延がない
(4)実現性の高い事業計画が作成できている
(5)面接時には事業計画についてしっかりと説明ができる

詳しく見ていきましょう。

(1)自己資金がある

融資に申し込む際に自己資金がゼロの状態で挑むと、準備が不十分とされ不適格とみなされる可能性が高いです。基本的に自己資金は多ければ多いほど審査に通る確率が上がります。事業に向けて貯金ができているという姿勢は「計画性がある」と思われる傾向にあり、信用力が高まるでしょう。

一方で、友人や家族から支援をしてもらったことでゼロだった預金口座が急に100万円などに跳ね上がった場合は、不審に思われる可能性もなきにしもあらずです。入金をした人の名前などが証明できるものを用意しておき、面接時に包み隠さず説明しましょう。

(2)公共料金や税金の支払いに未納や滞納がない

以下の支払いで未納、もしくは滞納のものはありませんか。

  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税
  • 事業税
  • 消費税
  • 電気ガス水道など、公共料金の支払い
    など

今まで会社勤めであれば、毎月の給与から税金が天引きされるので未納や滞納などはないかもしれませんが、すでに個人事業主などである場合は注意が必要です。審査の際には確定申告書などで税金の支払い状況が確認され、日本政策金融公庫で融資を受ける場合、支払い日なども確認されるようです。また、公共料金などの支払いには領収書の提出が求められます。返済期日を守れないことは信用度の低下にもつながるため、未納を解消すれば審査通過の確率が上がる、とは言い切れないのが実情です。最低でも半年前までの支払いは確認されるようなので、公共料金や税金の支払いは期日厳守に徹することが大切でしょう。

(3)金融機関への返済に遅延がない

金融機関の利用実績は一定の期間保管される仕組みになっています。融資の提供者が以下の遅延を確認した場合は審査に通過する確率が下がるとされています。

  • クレジットカードの支払い
  • カードローン・キャッシングの返済
  • 奨学金の返済
  • スマートフォンの分割払い
    など

(4)実現性の高い創業計画・事業計画が作成できている

融資提供先は貸した資金がどのように活用され、今後どのように返済力が生み出せるかという点を重要にしています。そのために参考にするのが、事業計画書・創業計画書です。日本政策金融公庫では「創業計画って何ですか?」という動画を公開しているのでぜひチェックしてみてください。業種別の創業計画書の記入例も、同じく日本政策金融公庫のウェブサイトから確認できます。

また、「創業計画書の書き方がわからない」という場合は以下のサービスの利用がおすすめです。

・個人事業主などのスモールビジネスに向けた「創業融資freeeを利用する
創業融資freeeは、会計ソフトでも知られるfreeeが提供する、事業計画書の作成を簡易化してくれるサービスです。必要項目に入力するだけで事業計画書が完成するので、煩雑な書類作成をラクにしてくれるでしょう。

・商工会議所が提供するセミナーに参加する
事業計画書には「創業の動機」や「セールスポイント」「販売戦略」など、具体性を持って書き記さなければいけない項目もあります。この内容が曖昧であったり実現性がなかったりすると審査に通らないことが考えられます。「説得力のある書き方を学びたい」という思いがあるのであれば、商工会議所が提供する「創業相談」などのセミナーへ参加するのも一つの手でしょう。東京商工会議所で開催されているイベントはこちらから確認できます。

・認定支援機関を利用する
セミナーでは複数人数が参加する形になりますが、事業計画書の作成においても「一対一でじっくりサポートをしてほしい」という場合は認定経営革新等支援機関の利用も検討視野に入れてみるといいでしょう。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関」に登録されている機関(※)であれば、融資を受ける際の書類作成に長けており、創業者の話を聞きながら一緒に創業計画書の作成に取り組んでくれます。また、認定経営革新等支援機関を通して融資に申し込めば面接にも同席してくれるようです。店舗を開業するエリアの管轄の認定経営革新等支援機関は、中小企業庁のウェブサイトから検索しましょう。
※中央金庫や民間コンサル、税理士、中小企業診断士、公認会計士などを含みます

(5)面接時には事業計画についてしっかりと説明ができる

融資の申し込みから実行までには、書類審査と合わせて30分から1時間ほどの面接審査の出席が必要です。創業計画書の内容をはじめ、事業にまつわるさまざまな質問に忠実に回答することが求められます。ここでも書類審査と同じく、「計画は曖昧ではないか」「事業を発展させるための計画を事細かく説明できるか」などの点が確認されます。前述のように心配であれば、認定支援機関を味方につけて挑むのも一つの手段でしょう。

自己資金などでは開業資金が不足してしまう場合に頼りにしたい融資。この記事では融資の種類を掘り下げながら、スモールビジネスでも挑戦できる融資を紹介してきました。書類の不備などであっけなく審査に落ちてしまわないよう、抜かりなく準備をしたうえで融資実行への道のりを築いてみてはいかがでしょうか。


続けて読もう!クラウドファンディング・ビジネスコンテストにトライしてみよう

(1)開業に発生する費用とは
(2)補助金・助成金を活用しよう
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執筆は2019年12月4日時点の情報を参照しています。
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