法定福利費とは?基礎知識を詳しく解説

Square (スクエア), ブログ編集者

「法定福利費」は、企業の経営や従業員の生活に深く関わっており、ビジネスオーナーであるならば、きちんと理解しておきたいところです。

今回は、法定福利費の基礎知識から福利厚生費との違い、種類や加入義務の有無、計上の仕方などについて解説します。

jehu-christan-H6qHAfbss4c-unsplash

法定福利費とは

法定福利費は簡単にいえば、企業が福利厚生のために支払う費用のうち、法律で義務づけられているものをさします。

具体的には、社会保険料や労働保険料のうち、企業が負担する部分のことです。法律においては、健康保険法、労働基準法、厚生年金保険法、介護保険法、労働者災害補償保険法、雇用保険法などで定められています。また、会計処理においては、勘定科目として使われます。

企業にとっては大きな支出負担となりますが、従業員が安心して生活していくために欠かせない費用でもあります。

福利厚生費との違い

会計上、法定福利費と間違えやすいものに「福利厚生費」があります。二つの違いは、ざっくりいえば「法律で義務づけられているか、そうでないか」です。

前述した通り、法定福利費は法令で企業が負担することが定められている保険料のことです。一方、福利厚生費は、企業が従業員の健康維持やモチベーション向上などを目的として、独自に行なっている福利厚生制度にかかるお金をさします。

たとえば、住宅手当や通勤手当、慶弔見舞金などが挙げられます。社員旅行などのレクリエーションや、歓送迎会など飲み会にかかる費用も、福利厚生費に該当します。

福利厚生は、従業員の満足度をアップさせ、安心して働き続けられるようにするために、企業が提供する給与以外の報酬・サービスをさします。法定福利費も福利厚生費の一つといえますが、法律によって支出負担が定められているという特徴から、会計上は別々に計上します。

the-honest-company-uM-WXMr0YXc-unsplash

法定福利費の種類

法定福利費に含まれる費用には、以下の六種類があります。

・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料
・子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)
・労働者災害補償保険料(労災保険料)
・雇用保険料

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

健康保険料
健康保険とは、従業員やその家族が加入する制度で、病気や怪我をしたときに医療費の自己負担が軽減されます。正社員は原則加入であり、パートやアルバイトのスタッフも労働条件によって加入義務が発生します。

保険料は労使折半となっており、企業と従業員が半分ずつお金を出し合います。

介護保険料
介護保険とは、高齢者や障害者など、介護サービスを必要としている人を支援するための制度です。こちらも保険料が労使折半であり、企業と従業員の費用負担割合は5:5です。

厚生年金保険料
老後も安心して生活できるように、老齢や障害、死亡に対して給付金を支払うための保険です。保険料は労使折半で、会社と従業員は半分ずつ費用を負担します。

子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)
国や地方自治体が行う子育て支援サービスに使うため、企業から徴収されるお金です。従業員に負担義務はなく、全額を企業が納付します。勘違いされやすいですが、従業員の子どもの有無は関係ありません。2019年4月に拠出金率の改定が行われ、現在は1,000分の3.4(0.34%)となっています。

労働者災害補償保険料(労災保険料)
一般的に労災保険と呼ばれる制度で、従業員が仕事中や通勤中でケガをしたり、病気になったりしたときに補償金を給付するものです。休業中の補助のほか、障害を負ったり、死亡したりした場合にも保険金が給付されます。

従業員を一人でも雇っていれば、企業は労災保険に必ず加入しなくてはなりません。保険料は、企業が全額負担します。

雇用保険料
何らかの理由で離職した従業員や、育児や介護で長期休業する従業員をサポートするために、必要な給付を行う保険です。要件を満たしている場合、従業員の希望に関わらず加入するのが原則です。なお、法人の取締役は加入対象外です。

保険料率は、事業の種類によって異なります。たとえば、一般事業(農林水産・清酒製造事業、建設事業以外)の場合は、労働者負担3/1000、事業主負担が6/1000となっています。

参考:平成31年度の雇用保険料率について(厚生労働省)

stil-zv5QSKaP8G8-unsplash

加入義務があるビジネス・ないビジネス

法定の福利厚生となっている社会保険や労働保険は、要件を満たしている場合、強制的に加入することになります。

社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)
健康保険や厚生年金保険などの社会保険は、法人はもちろんのこと、個人事業主でも一定の業種で常時5人以上を雇っている場合は適用対象となります。逆に言えば、4人以下で事業を行なうスモールビジネスの場合は、加入義務はありません。

なお、パートやアルバイトの人でも、1日または1週間の労働時間、および1カ月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上あれば、保険に加入させる必要があります。なお、介護保険は、受給対象となる40歳から保険料を払い始めるルールとなっています。また、従業員が厚生年金に加入している企業の場合、子ども・子育て拠出金も負担する必要があります。

労働保険(労災保険、雇用保険)
労災保険は、一人でも従業員を雇い入れているならば、加入義務があります。正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象です。雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがある人を雇い入れた場合に適用されます。事業規模は関係ありません。

参考:人を雇うときのルール(厚生労働省)

加入しなかった場合の注意点

加入義務があるのに、従業員が未加入の場合は法律違反となり、懲役や罰金などの罰則が科されます。たとえば、健康保険法第208条では、被保険者の届出をしなかった場合などに「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が規定されています。

法的措置や社会的信用の失墜を避けるためにも、自社は保険の適用対象か、従業員が未加入になっていないかを必ず確認しましょう。

オンラインで送信・管理が簡単にできる請求書

見積、請求、支払いを一つに

計上の仕方

法定福利費は、企業側が負担する費用と、従業員が負担する費用に分かれています。企業側については、勘定科目「法定福利費」で計上します。また、従業員の負担分(あらかじめ給与から天引き)については、「預かり金」で処理を進めることになります。

一般的に、法定福利費のお金の流れは以下のとおりです。

・企業が、従業員に給与を支払う
・従業員の負担分を給与から天引きし、残額を従業員の給与口座に振り込む
・企業の負担分と従業員の負担分を合わせて、年金事務所へ納付する

仕訳例を紹介します。

(1) 給与20万円(天引き額は2万円)を従業員に支払うとき
借方科目は「給与 20万円」、貸方科目は「預り金 2万円」と「普通預金 18万円」

(2) 保険料(企業分2万円+従業員分2万円)を口座引き落としで納付するとき
借方科目は「法定福利費 2万円」と「預かり金2万円」、貸方科目は「普通預金 4万円」

法定福利費は、法律で支払いが義務付けられている福利厚生用の費用であり、健康保険や雇用保険などから成っています。従業員のために必要な費用ですが、企業にとってはある程度まとまった支出になるため、企業経営をするのであれば、必ず知っておきましょう。

執筆は2019年9月2日時点の情報を参照しています。
*当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
*Photography provided by, Unsplash