保存義務有り!領収書の電子データ化のすすめ

事業を展開していく上で、領収書を発行したり受け取ったりする場面は多いのではないでしょうか。領収書とは、商品やサービスの取り引きにおいて、代金の受取人が支払者に対して金銭を正式に受け取ったことを証明するために発行する重要な書類です。領収書が無いと、確定申告や決算時に経費として認めてもらえない場合があります。

領収書は、請求書や契約書と同様に、取引を証明する重要な書類である「証憑書類」に該当します。証憑書類は、法律で一定期間の保存が義務付けられており、勝手な判断で処分をすることができません。領収書は帳簿書類に分類され、原則7年の保存が義務付けられています。

帳簿書類等の保存期間及び保存方法(国税庁)

税務調査が入った場合、領収書の提示を求められることもあるので、いざという時にすぐに該当書類が出せるように管理を徹底しておく必要もあります。

しかし、取り引きの度に発行される領収書の全てを何年も保存するとなると、膨大な量の書類を保管する場所の確保や煩雑化する管理に手間暇が取られてしまい、経営の本来の目的である事業拡大に注力できなくなってしまいます。特に資金面や人員面に余裕が無い小規模企業や個人事業主にとっては大きな負担になるのではないでしょうか。

このような現状を受け、近年では、各事業における経理業務の負担軽減を目的に法的要件を緩和する動きが見られています。

スキャナ保存制度

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電子帳簿保存法は、“情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等”(第一条)を目的として1998年に施行されました。この法律の制定により、それまで紙で記録してきた国税関係帳簿に関する情報を電子データで作成・保存できるようになりました。

2005年には、同法律の一部改正を機に「スキャナ保存制度」が制定され、事前に所轄税務署長などの承認があれば、一定の要件に従って帳簿書類を電子データに変換して保存することが認められるようになります。従って、電子データ化した後の原本書類は廃棄することが可能になりました。

しかし、この「一定の要件」とは、多くの事業者にとって現実的なものではありませんでした。スキャナ保存が認められている領収書を含む帳簿書類の記載金額は三万円未満のものに限られ、読み取りには原稿台と一体型であるスキャナ装置を使わなければならないなどの制限がありました。他にも、読み込み時の色やサイズに関する細かな要件や電子署名の付与などの厳しい制約があり、スキャナ保存制度の2015年時点での適用件数は、国税庁が実施した統計では、わずか152件にとどまりました。

二年連続で改定された電子帳簿保存法

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その後、2015年、2016年と二年続けて税制改正が実施され、帳簿書類のスキャナ保存に関する要件は大幅に緩和されました。

まず、スキャナ保存が認められている対象書類の記載金額の制限が撤廃されました。三万円以上の領収書や契約書でも、適正事務処理要件を満たしていればスキャナ保存ができるようになりました。記載金額に関わらず、ほぼ全ての領収書がスキャナ保存の対象となりました。これにより、スキャナ保存ができる領収書とそうでないものとに分ける作業の必要が無くなりました。

適正事務処理要件は、スキャナ保存に関連した事務作業が一人に集中することが無いように役割分担を明確化させ(「相互けん制」)、各事務処理の内容を定期的に検査し(「定期的なチェック」)、その事務処理に不備が見つかった場合、再発防止に向けた方策を検討する体制を作る(「再発防止」)ことにより、領収書などを紙から電子データに変換する段階で情報の改ざんなどが行われるのを防ぐ措置として定められています。

また、小規模企業者の特例の制定により、原則20人以下の規模が小さい事業は、適正事務処理要件で義務付けられている「定期的なチェック」を顧問税理士などの税務代理人に依頼した場合に限り、「相互けんせい」の要件を満たす義務が解消されるなど、小規模企業に対する配慮がされています。

導入コストが問題となっていた電子署名も不要になり、代わりに、情報の読み取りをした担当者の情報が確認できることが要件となっています。

ただし、受領した領収書などをスキャナ保存する場合、改ざんがされていないことを証明するために「該当書類がいつから存在しているか」が分かるタイムスタンプを書類の受領後三日以内に付与しなければいけません。

他にも、スキャナ装置に関する要件の撤廃という大きな規制緩和がありました。2016年1月より、スマートフォンやデジタルカメラで領収書を撮影することが可能になり、スキャナ保存のためだけに帰社することなく、いつでもどこでも領収書の読み取りができるようになりました。

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申請から原本破棄まで

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改定を重ねてきた電子帳簿保存法によって、膨大な領収書の保存・管理で悩まされていた各事業者にとってのスキャナ保存に関する法的要件は実現可能な実務レベルにまで下げられたといえるでしょう。電子データ化された領収書は、保存スペースにかかるコスト削減にも、管理の簡素化にも効果的です。

スキャナ保存を利用するためには税務署長への事前申請が必要です。申請から原本の破棄まで、以下の手順を参考にしてみてください。

税務署長に申請する

事前申請は、スキャナ保存を開始する三ヶ月前までに行う必要があります。国税庁のウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要事項を記入し、最寄りの国税局または税務署に提出し、所轄税務署長の承認をとりましょう。

領収書の提出ルールを定める

領収書のスキャナ保存と提出に関する社内ルールを決めましょう。例えば、領収書を受領した従業員は、提出者名が分かるように署名をし、スマートフォンやデジタルカメラで撮影(スキャン)した電子データを経理担当のメールやファイルサーバーなど社内専用システムに送るという一連のフローを定めて周知します。この際、受領後三日以内にタイムスタンプ付与が必要などの提出要件も社内ルールに盛り込みましょう。

各従業員は共通の社内ルールを遵守して領収書を提出します。

確認作業

提出された領収書は、担当者(経理担当など)を決めて内容を確認します。スマートフォンやカメラによる撮影は、光の加減や角度などによって正確に読み取れない場合があります。必要な情報や記載事項が写真からでも認識できるかどうかを確認します。場合によっては提出者に撮り直しを要求します。領収書の撮影ガイドラインを準備しておくといいかもしれません。

改ざんなどの不正行為の防止策は徹底的に

前述の適正事務処理要件に従って、領収書の提出者や電子データの確認を担当する経理担当以外の第三者によるチェックを入れます。領収書を電子データ化する一連の流れに不正がなかったかなどを厳しく確認します。この作業の完了をもってデータをフォルダーに保存します。

電子データは並び替えや検索などの取り扱いが比較的容易ですが、紙の領収書同様に日付や取引内容別にフォルダーを分けるなどして管理しましょう。必要に応じてすぐに目当ての書類を見つけ出せるように工夫した管理が求められます。

原本(紙の領収書)を破棄する

領収書が正しく電子データ化・保存されたことが確認できたら、紙の領収書は破棄することができます。

避けて通ることのできない領収書の保存と管理。経理業務の効率化を実現するためには、法律をよく理解し、社内で作成した一定のルールを全ての従業員が理解した上で事務処理を進めていく必要があります。

一見複雑そうに見えるスキャナ保存ですが、業務フローに落とし込んでしまえば、経理業務の効率化に一役買ってくれることは想像に難くないでしょう。業務の簡素化が期待できる一手段として、スキャナ保存を是非検討してみてください。

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執筆は2017年3月23日時点の情報を参照しています。
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