育児休業給付金とは?延長申請方法も押さえておこう

女性だけでなく男性も育児をするのが日本でも一般的になってきました。ビジネスオーナーの中には、従業員から育児休業やその間の育児休業給付金の取得についてすでに相談されている、これから相談されることになりそうだという人も少なくないでしょう。本記事ではビジネスオーナーとして知っておきたい育児休業給付金について説明します。

目次



育児休業給付金とは

育児休業とは、子どもを養育するために休業することで、性別を問わず法律で認められた権利です。育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)の第二章に詳しい記述があります。詳細な条件は後述しますが、育児休業については「労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる」という記載があります。

参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(e-Gov)

育児休業は従業員が企業に対して申請するものですが、育児休業中に受け取る育児休業給付金は、国が育児休業中の養育者に対して支給する給付金です。企業が育児休業中に賃金を支払う義務はなく、金銭を支払うかどうかは各企業の裁量に任されています。従業員の充実した人生と生活を願いつつも、育児休業中の手当について心配していたというビジネスオーナーもいることでしょう。この点を知っておくだけでも、従業員の出産や子育てを不安なく祝福し、サポートできます。

育児休業給付金の支給条件

育児休業給付金の支給にはいくつかの条件があり、雇用保険法の第六十一条の四に記載があります。

参考:雇用保険法(e-Gov)

まず、育児の対象である子どもは、実子である必要はありません。法律的に親子関係が成立していて、以下の条件を満たせば養育者である従業員は育児休業給付金を申請できます。

育児休業給付金は、従業員が雇用保険の被保険者で、育児休業を開始する前の2年間に、みなし被保険者期間が通算して12カ月以上あった場合に支給を受けることができます。契約社員など、有期雇用労働者が育児休業給付金を受け取る場合は、1年以上雇用されていて、かつ、子どもが1歳6カ月になるまで雇用継続が確定または不明である必要があります。

また、育児休業には「休業」とあることから、完全に休業するイメージを持つ人もいるかもしれませんが、一時的・臨時的な就労は可能です。ただし、恒常的・定期的に働くと育児休業中とみなされず、育児休業給付金を受け取れません。目安として1カ月に10日、80時間を超えて就労しないこととされています。金額の上限もあり、賃金が育児休業前の月額の80%を超えると育児給付金は支給されません。この制限には、育児休業前に在職していた職場以外での就労も含まれます。育児休業中の従業員に臨時で仕事をしてもらいたい、従業員が就労を希望しているという場合は、事前に厚生労働省のウェブサイトで最新の情報を調べる、またはハローワークに相談してみるとよいでしょう。

参考:Q&A〜育児休業給付〜(厚生労働省)

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育児休業給付金の支給額

育児休暇給付金の計算式があります:

休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率 
= 育児休業給付金の月額

計算式の要素「休業開始時賃金日額」「支給日数」「給付率」については次の通りです。

休業開始時賃金日額
育児休業前の6カ月分の控除前総支給額を180日(30日 × 6カ月)で割ったもの

支給日数
原則として30日

給付率
当初67%で、育児休業の開始から6カ月が経過すると50%になります。

支給限度額は2020年1月現在、支給率が67%の場合304,314円、支給率が50%の場合227,100円です。

参考:支給限度額等変更のお知らせ(ハローワーク飯田橋)

ただし、これは育児休業中に就労していない場合の金額です。就労している場合、賃金に応じて給付額が異なります。給付率が67%の場合の例を示します(給付率が50%の場合は、13%を30%に置き換えてください)。

  • 「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 13%」未満の場合、減額なし
  • 「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 13%」以上、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 80%」未満の場合、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 80%」との差額
  • 「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 80%」以上の場合、支給なし

最終的な金額はハローワークに書類を提出して確定するため、上記はあくまで目安として参考にしてください。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金の申請手続きは、企業が、従業員が在職していた事業所を管轄するハローワークで行います。従業員が希望した場合、従業員が手続きを行うこともできます。

最初の申請では、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、育児休業給付受給資格確認票、育児休業給付金支給申請書、賃金の支払いを証明する書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、タイムカードなど)、育児中であることを証明する書類(母子手帳など)を提出します。マイナンバーや母子手帳など、従業員に適宜情報提供を求めて申請のための書類をそろえてください。

最初の申請が終わり、ハローワークの審査に通ると、育児休業給付金支給決定通知書が届きます。以降は、ハローワークから届いた育児休業給付支給申請書と、申請期間中に支払われた賃金や、就労・休業日数を証明する書類を提出します。

育児休業給付金の申請が初めてで、不安がある場合には、事業所のあるハローワークに相談するとよいでしょう。

育児休業給付金は2歳まで延長可能

原則として、育児休業給付金の支給期間は、子どもの1歳の誕生日の前日まで、1歳になる前に復職する場合は復職の前日までですが、一定の要件を満たすと、1歳6カ月または2歳まで延長できます。延長の条件を見てみましょう。

保育所などへの申し込みをしているものの、子どもが1歳になったあとに保育サービスを受けられる見込みがない場合、1歳6カ月まで育児休業給付金が支給されます。育児休業給付金の支給を延長するには、保育所などに問い合わせをして入所が難しいとわかっても、延長を申請するときに入所不承諾通知書などを提出するため、実際に申し込みをしている必要があります。同様に、子どもが1歳6カ月になったあとに保育サービスを受けられる見込みがない場合、2歳まで育児休業給付金が支給されます。また、子どもを養育している配偶者が、死亡または負傷して養育が困難な場合、離婚などで同居せず養育が困難な場合、出産または産後間もない場合にも延長が認められます。

申請は、保育を受けられる見込みがないこと、またはその他の事由を説明する書類を持参して、企業がハローワークで行います。従業員から育児休業延長について問い合わせがあったら、連携して書類をそろえてください。

女性だけでなく男性も育児をするようになり、今後、育児休業や育児休業給付金に関する手続きをする機会が増えると予想されます。本記事では、ビジネスオーナーが知っておきたい育児休業給付金について、基本事項から始め、申請・延長手続きについて説明しました。新しい家族を迎えて育児に忙しい従業員は、育児休業給付金という金銭的な支援を受けることで、金銭的な不安を感じることなく、育児に専念し、達成感をもって職場に復帰できることでしょう。ぜひ本記事を参考に、従業員から育児休業の申請があったときに、スムーズに育児休業給付金を申請して、従業員を支えられるように備えておきましょう。


執筆は2020年1月14日時点の情報を参照しています。
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