人材不足の救世主!?出戻り社員とは

最近、目や耳にする機会の増えている「出戻り社員」や「アルムナイ」という言葉。どちらも一度退職したのちに再び同じ企業に雇用された従業員のことを指すもので、この再雇用行為のことを「出戻り採用」と呼ぶこともあります。今回はこの「出戻り社員」や「アルムナイ」について、経営者として知っておきたい基礎知識や労使双方のメリットとデメリット、運用する際の注意点などを紹介します。

出戻り社員とは

「出戻り社員」とは、一般的に一度退職してから同じ企業に再雇用された従業員のことを指します。この「出戻り社員」は、英語で「卒業生」や「同窓生」といった意味を持つ「alumnus」の複数形である「alumni」(アルムナイ)と呼ばれることもあり、このような人材を雇用する行為を「出戻り採用」、一度退職した従業員を再雇用する仕組み全般を「アルムナイ制度」と呼ぶことがあります。

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出戻り採用が増えている背景

出戻り採用は以前から外資系企業を中心にみられていましたが、近年は幅広い企業で行われるようになってきており、注目を集めています。

出戻り採用が増えているおもな背景としては、以前と比べて終身雇用が行われなくなってきていることや、労働人口の減少に伴う人材不足、採用・教育コストの削減などが挙げられます。

出戻り採用のメリットとデメリット

では、出戻り採用にはどのようなメリットやデメリットがあるでしょうか。従業員と企業、それぞれの立場ごとにみていきます。

従業員側のメリット

出戻り採用による従業員側へのメリットとしては、おもに次のようなものが挙げられます。

知っている企業で働く安心感
初めて働く職場では、周りの従業員は基本的に知らない人ばかりです。さらに、職種が異なるようであれば、仕事の進め方や取引先とのやり取りなど初めてのことばかりで、多かれ少なかれストレスを感じざるを得ないものです。

一方、過去に働いたことのある職場に出戻り社員として働く場合には、取引先を含めて多くの知った顔に囲まれ、社内外の付き合いや職場のルールなどにも抵抗なく馴染むことができます。出戻り採用で得られる安心感は、仕事のパフォーマンスにも良い影響をもたらすものとなるでしょう。

ミスマッチが少ない
相手先のことを何もかも十分に知り尽くしてから転職をするということは、基本的に不可能だといえます。そのため、入社後に自分と合わない部分や、その企業の嫌な部分などがみえてきてミスマッチを感じることも少なくありません。

ただし、過去に働いた経験のある職場への出戻り採用であれば、企業の内情もある程度把握し、良い面も悪い面もおおむね知ったうえでの転職となるので、ミスマッチを感じたり後悔したりするリスクを限りなく減らすことができます。

第三者的な目線で社内がみられるようになる
一度企業を辞め、別の企業で働いてから出戻り採用で元の企業に戻ってくると、以前働いていたころに比べて一歩引いた目線で自社をみることができるようになっていることがあります。そのような視線を持ち合わせていると、業務上の非効率な部分や他社とのギャップなどもみつけることができ、改善提案などを通して経営効率のアップに寄与することができるでしょう。

企業側のメリット

出戻り採用による企業側へのメリットとしては、おもに次のようなものが挙げられます。

即戦力が採用できる
新卒採用であれば当然ですが、中途採用であっても、本格的に仕事を任せられるのはある程度は知識と経験を積んでからとなります。一方、出戻り社員であれば、業務上のスキルだけでなく、社内の取り決めを理解していたり、円滑に仕事を進めるためのキーマンなどを掌握していたりすることもあるため、すぐに力を発揮してくれるという期待が持てます。

外部の技術やノウハウが得られる
出戻り社員には、他社で働いていた経験から得られた、自社にはない技術やノウハウを持ち込んでくれる可能性があります。また、自身で企業を経営したり、フリーランスとして働いたりした経験を持つ出戻り社員には、経営者としての視点を持った者もおり、経営側の意図を汲みながら業務に取り組んでもらえる可能性もあります。

ミスマッチが少ない
書面や面接だけで採用する人材は実力が測りづらく、期待していた能力を発揮してくれないことがありますが、出戻り採用であれば、過去に働いていたころの技量がわかっているため、期待通りに行かないことが少なくなります。

教育の期間、コストが少なく済む
まず社内オリエンテーションなどに割く時間が不要、もしくは大幅に少なくできます。さらに、以前と同じ職種への採用であれば、仕事の進め方や取引先の情報などについても教える量が少なくできます。このようにOJTに費やす期間や研修のための費用が格段に少なくできる点は大きなメリットといえるでしょう。

短期でコストをかけずに採用できる
すでに候補となる人材の人間性や能力について把握できているため、大勢の候補者のなかから見極めたり、比較検討したりする手間と時間が省けます。

また、基本的に人材紹介会社などを通さずに直接採用活動ができるので、金銭的なコストもあまりかかりません。

従業員側のデメリット

出戻り採用による従業員側へのデメリットとしては、おもに次のようなものが挙げられます。

以前と環境が劇的に変化していることがある
業務内容も社内のシステムも知っているから大丈夫だと思って戻ってみたら大きく変化していた、ということも考えられます。場合によっては、同僚も上司も変わっているかもしれません。転職と同様、新しい環境に慣れるのに時間がかかることが考えられます。

雇用条件が悪化することもある
以前働いていたときとの景気の格差や、経営状態によって、過去と比較して役職や給与面での条件が悪くなるケースもあります。

成果に対するプレッシャー
出戻り社員には、以前と比べて仕事のできない人間になっていると思われたくないために、良い結果を出さなくてはいけない、という心的負担を感じる人が多いといわれています。また、再度辞めてしまうと改めて雇用してもらえるチャンスが期待できなくなるため、安易に退職できないというプレッシャーを感じるかもしれません。

企業側のデメリット

出戻り採用による企業側へのデメリットとしては、おもに次のようなものが挙げられます。

既存の従業員のモチベーション低下
既存の従業員のなかには、出戻り採用をあまり歓迎しない人もいるかもしれません。出戻り社員の処遇に納得がいかない場合には、モチベーションの低下を招きかねません。

職場の雰囲気を悪くすることのないよう、出戻り社員を採用するときには、既存の従業員にメリットを説明し、理解を促すことを忘れないようにしましょう。

「辞めても戻れる」というイメージで人材流出
出戻り採用を行なった前例が、一歩間違えると「辞めてもいつかは戻ってこられる」という認識につながる可能性があります。このイメージが定着してしまうと続々と従業員が辞めてしまったり、優秀な人間が退職してしまったりというような、人材流出リスクが高まってしまいます。

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出戻り採用の運用方法

では、出戻り採用を行ってゆく仕組み「アルムナイ制度」を整えるにはどのような点に注意すればよいでしょうか。主なポイントを紹介します。

退職者との関係を維持する
退職者を採用するには、退職者とコミュニケーションをとる方法を確立しておく必要があります。電話やメールでの連絡先を把握しておくことはもちろんですが、恒常的に関係を保ち、いつでも気軽に連絡がとれるようにソーシャルメディアなどを利用するのも一つの方法です。

採用条件の明確化
安易に復職できるような印象を与えて離職者の増加を招かないよう、出戻り採用の対象となるための条件を明確にしておきましょう。具体的な在職期間や業務ごとに必須のスキル、資格などをできる限り客観的に判断できるよう規定しておきます。

受け入れ態勢づくり
出戻り採用に抵抗のある既存の従業員に不満を持たれたり、出戻り社員と既存の従業員との間で軋轢が生まれたりしないよう、出戻り採用を行う理由やメリットなどを全社的に周知、理解させておく必要があります。

アルムナイ制度の周知
以前働いていた職場でまた働きたいと思っても、企業側が受け入れてくれるかどうかが不安で申し出にくいことも考えられます。アルムナイ制度を導入しているのであれば、在職者に知らせることはもちろん、退職していく際にも、そのような制度が整っており、希望に応じて活用できるということを忘れずに知らせておきましょう。

執筆は2019年11月27日時点の情報を参照しています。
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